ひろばの子育て支援第3回(名古屋市)子育て支援で大人が変わる、地域が変わる

更新日: 2007年8月1日

1.子育て支援が必要な社会状況

 現在の日本は、妊娠、出産後も働く女性が増えたとはいえ、まだまだ性別役割意識が根強く残っています。また、少子化や核家族化、地域社会の崩壊に加え、経済が不安定な時代になっています。子育て情報は氾濫しているものの、自分なりの子育て観をもちにくく、育児不安や孤立感、閉塞感などによるストレスから、子どもに虐待をしてしまうケースもあり、深刻な社会問題となっています。乳幼児に触れ合う機会が少ないまま親となり「私の子育てはこれでいいの?」と不安に感じるのも無理のないことでしょう。社会全体で、親も子もサポートをしていく必要がありますが、子育て環境や子育てに対する関心は薄い現状があります。

 私自身も結婚を機に退職、夫の転勤で名古屋に来て孤独な子育てを経験しました。その中で2人の子どもはそれぞれ親となりましたが、仕事と子育ての両立がまだまだ厳しいため、地域や企業の支援を求めています。1998年はフランス、2001年はカナダの子育て支援を視察しました。そこで学んだことは「地域社会で子育てをサポートする体制を作ること」、「働き方と子育てのバランスが取れる環境を整えること」ができれば男性も女性も子育てを楽しみ、人と人とのいい関係をつくることによって、子どもが安心して育つ地域社会ができると確信しました。

2.まめっこの合言葉は「親も子も、主人公!」

 1993年にスタートしたまめっこ親子教室の3つの特色は

  • たくさんのおもちゃ
  • アレルギー対応の手作りおやつ
  • 遊びとディスカッション

 の3点にあります。この特色を生かすために部屋にはディスカッションのコーナー、遊ぶコーナー・おやつコーナーを設けます。

    第3回(名古屋市)子育て支援で大人が変わる、地域が変わる
  1. 遊び
     木のおもちゃや手作りおもちゃ、粘土、台所、工作、大きな画板に絵が書けるお絵かきなどのコーナーで親子が思い思いに遊びます。子どもは、親子遊びやおもちゃを媒介に子ども同士の関わりを体験します。また、五感を十分につかった遊びは、豊かな想像力を育みます。乳幼児期は親と子の関係を築くことが大切な時期です。それを土台に他の大人や子どもとの関係をつくっていきます。この時期に大好きな大人や友だちと心から楽しいと思える体験を積み重ねることで体も心も成長していきます。この空間は親が自分の子だけでなくいろいろな子どもと遊ぶことで「やさしさ」や「ゆとり」を取り戻す場になっています。そして親子や子ども同士が生き生きと遊びます。
  2. 手作りおやつ
     アレルギー対応の手作りおやつはシンプルです。また子どもが「食べない」ことで悩んでいる親には、仲間と一緒に食べるおやつは楽しいという体験ができる貴重な時間です。
  3. ディスカッションタイム
     子どもたちは、遊びを続けますが、ママたちはAグループ、Bグループに分かれます。Aグループが話をしている間、Aグループの子どもはBグループの親子と遊びます。交替して、Bグループが話している間は、Bグループの子はAグループの親子と遊びます。コーヒーや紅茶を飲みながら、子どもの成長のこと、子育てのこと、子育て後の自分の夢や社会のこと、夫婦のことなど自分を見失ったり、子育てでストレスを抱えているママ同士が話し合うことで自分を発見したり、知恵をもらったりする学びの場になっています。テーマはスタッフが事前に話し合いのもと決めておきます。ディスカッションリーダー1、人プレーリーダー1人、サブプレイリーダー1人、そしておやつ担当の1人で計4人。この4人のスタッフの役割は親子の第3者の立場です。親子の関係、親同士の関係、子ども同士の関係を支えあうことに気付く場であり、繋げていく場です。そして子育てに自信を持つことができる支え合う関係づくりの場です。
  4. スタッフの役割と広がり
     親子教室が終わってからのスタッフミーティングも大事です。お弁当を食べながら、1日の課題、親子の様子、子どもの成長や変化について、その親への声がけ、親が抱えている問題への個別対応など、スタッフ同士のスキルを上げていきます。そしてスタッフという仲間たちの中で女性の社会的な立場やそこから気付いた問題を学びながらエンパワメントしていきました。

     1993年から子育て支援に関わった私は、自分の子育て経験からこの教室の活動は虐待の予防の場となることを確信しました。そこでボランティアではなく「仕事として捉えてやっていきたい」という思いから有料で実施しました。この教室を利用したママの中にはスタッフの働き方に興味を持って、「子育て中でも働けるのですか!私の地域にまめっこ作りたい」と、一時は名古屋市内4会場市外1回会場と広がっていきました。現在は、名古屋市に1か所、稲沢市に1か所の2か所あります。

     その間2000年に「法人子育て支援のNPOまめっこ」を取得し、地域に根ざした活動を展開してきました。まめっこの経験を生かせる場として、保健所の親子教室の講師・児童館のあそびの講師・生涯学習センターの講師と活動場所を広げていきました。一方でスタッフの置かれた現状は、夫の転勤や介護で辞める人、経済的な理由でやめる人、などで常に不安定な組織を運営しています。

3.商店街にある広場「遊モア」誕生

 子育ての社会化のためには商店街で子育て支援が見えるような取り組みが必要と思い、2003年経済産業省空き店舗活用事業の補助金を得て、愛知県名古屋市北区柳原通商店街に「0,1,2,3歳とおとなの広場 遊モア」を開設しました。

1)「遊モア」の活動の特色

第3回(名古屋市)子育て支援で大人が変わる、地域が変わる

 「遊モア」の活動の特色は、

  1. 子どももおとなもほっと一息つける場所
  2. 出会い、繋がり、遊び、学ぶ場所
  3. 急な預かり、リフレッシュなどの一時保育
  4. 2歳児向け集団遊びと預かり保育のモアキッズ

 の4点にあります。この特色を生かすために部屋は遊びコーナーと交流コーナーが緩やかに分かれています。床暖房や子ども用トイレも設置してあります。

  1. 子どももおとなもほっと一息つける場
    楽しく遊ぶ場、親同士の情報交換の場であり、くつろげる工夫をしています。
  2. 出会い、繋がり、遊び、学ぶ場所
    ミニイベントでは地域の方に、特技や専門的なことを披露していただき地域につなげています。
  3. 急な預かり、リフレッシュなどの一時保育
    地域にある広場なので、子どもはスタッフにも慣れて、ママも安心して預けられます。
  4. 2歳児向け集団遊びと預かり保育の「モアキッズ」
    この時だけは子ども同士子どもの集団や社会的ルールを学びます。スタッフは子どもの成長を伝えたり、ママたちの相談に応じることで子育てへの不安を解消できます。
  5.  商店街の方たちからは

    • 「子どもはほっとけば育つのに、そんな場をどうして創るの?」
    • 「利用者が来るのかなあ」
    • 「中途半端な料金を取ってやっていけるの?」
    • 「1日遊んで優雅だね」
    • 「今のママは我慢がたりないね」

     などと言われました。

     経済産業省の補助金が切れたり、助成金も十分確保できないなど資金的にも綱渡りで始めて5年目を迎えました。利用者は主に子育てを専業とするママですが、育休中のママやパパ、子育てに関わりたいおとなの人たちも来ます。「こんな場所が欲しかった」「有料ですか?他のところ(保健所や児童館など行政関係施設)は無料なのに?」という声で、市政や地域についてもいろいろ知ることになります。利用者数は、昨年1年間で3,972人でした。そして、その間に商店街は変化してきました。

    2)「遊モア」のもたらした効果

      第3回(名古屋市)子育て支援で大人が変わる、地域が変わる
    1. 商店街の変化
      「遊モア」の活動を通じて、地域にいろんな方のボランティアスタッフが誕生しました。たとえば、以下のようなものです。
      ・商店街のおかみさんの会(Fの会)
      ・中・高・大学生とその先生
      ・保育士、助産師さんなどの専門職の方
      ・遊モア利用者のママたち
      ・地域の主任児童員、地域の方
    2. 協働から街づくりへ
      商店街と遊モア利用者の協働で形になった「人にやさしい街マップ」商店街の良さをアピールでき、子育て支援に対する理解が深まったりしました。子育て応援する商店街として活気が取り戻せる機運を作りました。

    4.まめっこの支援メニュー

     現在まめっこでは、以下のような活動をおこなっています。

    1. まめっこ親子教室 2会場(名古屋市北区・稲沢市)
    2. 0.1.2.3才とおとなの広場「遊モア」(子どもとおとなのひろば 一時保育 イベントや講習会開催)
    3. 児童館の親子遊び講座
    4. 保健所主催のサロンスタッフや親子遊びの教室講師
    5. 生涯学習センター主催親子講座講師
    6. 機関紙「ぴーず」年2回発行
    7. 子育てサークルへの出張講師
    8. シングルの親の交流会
    9. 子育て支援者養成講座主催
    10. フォーラムなど開催
    11. IT講座主催

     まめっこが、ここまで継続できたのは全国的なつながりがあったからです。子育てひろば全国連絡協議会では知恵や勇気をもらいました。同じ想いの仲間とネットワークすることは大事なことであり、これからは、組織内部に、地域に、全国に「出会う場や繋がる場、遊ぶ場、学ぶ場」を創っていきたいと思います。

    まめっこWebサイト:http://www.h5.dion.ne.jp/~mamekko/

    山縣 文治(大阪市立大学 生活科学部 人間福祉学科 教授)

     子育て支援を考える際に、私は、[1] 子ども自身、[2] 親、[3] 親子関係、[4] 地域社会の4つのターゲットを考える必要があると感じています。

     子どもは「育つ」存在であると同時に、「育てられる」存在でもあります。その結果、子育て支援活動は、プレイパークなどの「子どもの育ち」を主眼としたものと、一時保育や遊戯活動などの「子どものケア」を主眼としたものとに大きく分かれることになります。もちろん個々の支援活動をみると、完全にこの両極に分離されることは珍しく、それぞれの事業において、両者の要素を一定の割合で組み込んだものが多いようです。

     第2のターゲットである親は、大きく3つに分かれます。すなわち、「子育てをする存在としての母(父)」、「夫(妻)との関係で存在する妻(夫)あるいは家庭を切り盛りする存在としての主婦(主夫)」、「子どもや家庭との関係を超えて存在する一人の人間としての女(男)」の3つです。一般のイメージあるいは保育所などの活動をみると、育児講座などの「母」支援活動が、子育て支援活動の中心と見なされがちですが、残る二つの部分も非常に重要な活動と考えています。

     第3の親子関係は、「育てられる存在としての子ども」と「育てる存在としての親」との間の関係の円滑化を図るものです。親子教室、育児講座、相談活動などがこれにあたります。

     第4は、地域社会との関係の構築です。子育て支援活動は、非日常の活動です。生活は日常的に営まれるものであり、非日常と日常をつなぐ仕掛けを作らなければ、親子が地域で円滑に生活を営むことは困難です。また、子どもが大きくなるに連れ、親は子どもとは無関係にそれこそ、一人の人間として地域社会の中で生活を営まなければなりません。子どもも同様です。従来の子育て支援活動では、地域社会との関係は必ずしも十分ではありませんでしたが、私はこのことが非常に重要であると考えています。

     このような4つのターゲットがうまく機能すると、図に示すようなアンパンマンが育つことになるのです。

    第3回(名古屋市)子育て支援で大人が変わる、地域が変わる

     このような視点から、まめっこの活動を振り返ってみましょう。まめっこの特徴は、「遊モア」を開設することにより、地域社会とのつながりが強化された点にあると思います。本文では、「遊モア」のもたらした効果、としてまとめてある部分です。まさに、アンパンマンが活動しているのです。

     派生的な効果としてこれをみるのではなく、このことを積極的に目的の一つとして位置づけた子育て支援活動がもっとあっていいと思いますし、そのような視点からの評価も必要だと思います。