行政等の取組事例発達障がいのある児童、家族への支援~鳥取県の取り組み~

更新日: 2011年12月1日

 鳥取県では、法定健診以外に全市町村で5歳児健診・発達相談を実施し、発達障がいのある児童、疑いのある児童の早期発見・早期支援とともに、一貫した支援を目指して、市町村や関係団体と協力して、いくつかのプログラムの開発を行い(図1参照)、現在、その普及に努めているところです。

 このプログラムの中で、県立施設が取り組んだ発達障がい児の家族へのアプローチ(保護者を支援に導く工夫、子どもへのかかわり方を学ぶ支援、保護者を精神的に支える支援)の手法やその効果について、次に述べます。

■保護者を支援に導く工夫(鳥取県立総合療育センター)

1)鳥取県立総合療育センターでの発達障がい支援
 鳥取県立総合療育センターは、県西部に位置し、外来診療機能も併せ持つ県立の肢体不自由児、重症心身障害児・者の入所および通所施設です。外来診療の一環として発達障がいのある、または疑いのある子どもを対象とした支援を行っています。
 発達障がいのある子どもへの支援には、診察、発達検査などの個別評価、個別訓練、小集団活動などがあります。小集団活動は、5人程度の少人数の集団で活動を行うもので、就学前の子どもを対象とした「わくわく教室」と、小学生を対象とした「がやがやクラブ」があります。医師、言語聴覚士、作業療法士、心理療法士、保育士、児童指導員の多職種のチームで運営しています。「がやがやクラブ」は、年度ごとにグループをつくって1年間、ソーシャルスキルトレーニングを行う療育活動です。一方「わくわく教室」はそれとは違い、評価(アセスメント)のためのグループです。診察場面での観察と保護者のお話だけでは情報が十分に得られない場合、「わくわく教室」に3回参加してもらって行動評価を行い、その子どもが通っている幼稚園・保育園へも訪問して行動観察と情報収集をします。このとき、園職員に子どもへのかかわり方についてのアドバイスも行っています。これらの評価結果をもとに、保護者に子どもの特徴を伝え、今後の見通しや支援方針を示すことになります。
 したがって、「わくわく教室」を利用される子どもたちは、健診や保育園・幼稚園あるいはご家庭での何らかの気づきをきっかけに受診したばかり、ということが多く、診断がついている子もついていない子もいます。保護者にしてみれば、「うちの子は、他の子どもたちと何か違うところがあるのだろうか?」、「障がいがあるかもしれないということだけれど、それは治るのだろうか?」、「親として、何かしてやれることや、しなければならないことがあるのだろうか?」、と不安の大きいときに「わくわく教室」を紹介され、利用を始めることになります。

 そこでわたしたちは、子どもへの支援だけでなく、保護者への支援も必要と考え、平成19年度からペアレント・トレーニングに取り組み始めました。

2)保護者支援イメージキャラクター「ペアレンジャー」
 当センターでは、保護者の皆さんを「ペアレンジャー」と呼んでいます。「ペアレンジャー」とは、「ペアレント(親)」と「レンジャー(特殊技能を身につけた隊員)」の2つを合わせてつくった言葉です。「子どもにとって最も身近で、最も頼りになる存在は家族。その家族が、自信と喜びに満ち、子どもの強い味方になれるように。」という願いを込めて、イラストのようなイメージキャラクターをつくりました。

 当センターでは、ペアレントトレーニングのグループを「ペアレンジャー養成講座」と名付け、保護者の皆さんが子どもたちの強い味方「ペアレンジャー」になれるよう支援しています。

3)ペアレントトレーニング「ペアレンジャー養成講座」
 「ペアレンジャー養成講座」は、子どもが「わくわく教室」に参加している時間に、その保護者を主な対象としてグループで行っています。心理療法士が進行役をし、医師、児童指導員、医療ソーシャルワーカーもスタッフとして参加しています。グループと言っても、子どもの「わくわく教室」利用は原則3回で終了となるため、常にメンバーの入れ替わりがあり、「ペアレンジャー養成講座」に参加する保護者の顔ぶれも毎回違っています。そのため、その日に参加する保護者に合わせてスタッフが内容を選び、実施しています。内容としては、子どものことを他者に説明する練習「うちの子紹介」、ほめるコツなどについて学ぶ「上手なかかわり方」、子育てのヒント満載の「ペアトレかるた」などがあり、いずれも、これらをきっかけとして参加者同士がおしゃべりし、情報交換が活発になされるよう配慮して進めています。
 決められた回数参加し学びを深めていく一般的なペアレントトレーニングとはやり方が異なりますが、参加者同士の交流の中で子どもへのかかわり方を振り返ったり、ちょっとした子育てのヒントを得たりする、入門編のペアレントトレーニングと考えています。

ペアトレカルタ

4)「ペアレンジャー養成講座」の効果
 参加者は「ペアレンジャー養成講座」の中で、「他の人に聞いてみたい」と子どもについての悩みを相談したり、アドバイスを返したり、他の参加者のやり方を「うちでもやってみよう」と取り入れたりしています。
 参加前後でFDT(family diagnostic test:親が子どもをどうとらえているかをみる質問紙)の結果を比較すると、「養育不安」が下がり「基本的受容」が上がる望ましい変化を確認できました。
 終了時アンケートでは満足度が高く、子どもへのかかわり方が変化したと回答した参加者が多くいらっしゃいました。
 また、「悩んでいるのは自分だけじゃないと思えた」、「他の参加者のやり方が参考になった」、「自分の子どもに対する発言や態度について振り返ることができた」、「子どもを『叱る』から『ほめる』に重点をおくようになった」などの感想が聞かれています。


5)ペアレントトレーニングプログラムの普及
 当センターで使っているプログラムを他機関でも使ってほしいと考え、進行マニュアルを作成しました。進行マニュアルには、プログラムのねらいと流れだけでなく、進め方のコツやよくある質問などについても書いてあり、それを見ながらグループ運営ができるようになっています。
 これまでに、鳥取県内の町村や他県の療育機関などで当センターのプログラムを取り入れ、ペアレントトレーニングの実施につなげていただきました。
 マニュアルやワークシートは、希望される方に無料で提供しています。また、当センターのペアレントトレーニンググループを見学していただくこともできます。実施を検討しておられる機関のご相談に応じてバックアップを行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ先:鳥取県立総合療育センター TEL 0859-38-2155
ペアレントトレーニング担当者まで

6)まとめ
  発達障がいを疑われて医療機関を受診したばかりの子どもの保護者を対象に、ペアレントトレーニング「ペアレンジャー養成講座」を実施しています。内容は入門編ですが、参加者同士がおしゃべりし、交流することで、同じ悩みに共感しあい、新たなヒントをもらって日々の子育てに活かす場となっています。

7)おまけ
 子育てに悩みながらも日々奮闘しているペアレンジャー(保護者)への応援歌「ペアレンジャー音頭」を紹介します。

  1. 強い子も 弱い子も 忘れ物の多い子も
    笑顔の子 怒りんぼ ひとり遊びの好きな子も
    みんな大事な宝物
    それを守るよ ペアレンジャー
    ペペンペンペン ペアレンジャー
  2. いい親になりたくて なろうとしたけどなれなくて
    困っては 行きづまり 自分が嫌になることも
    それは誰でも同じだよ
    一緒にやろうね ペアレンジャー
    ペペンペンペン ペアレンジャー
  3. 叱ったり ほめたり 一緒になって喜んで
    喜びも 苦しみも 子育てするからあるんだね
    子どもたちからパワーをもらい
    強い味方だ ペアレンジャー
    ペペンペンペン ペアレンジャー


ペアレンジャー

■子どもへのかかわり方を学ぶ支援(鳥取県立鳥取療育園)

1)鳥取療育園の取り組み
 鳥取県立鳥取療育園(以下、鳥取療育園)は県東部に位置する県立の肢体不自由児通園施設で、外来診療、児童デイサービス等を通して発達障がいのある子どもやその家族の支援を行っています。
 鳥取療育園では、AD/HD、PDD等の発達障がいおよびその疑いのある子ども(概ね年中~小学校低学年)の保護者を対象に、「育てにくい子のごきげん子育て教室(以下、子育て教室)」を実施しています。この子育て教室は、国立病院機構肥前精神医療センターの親訓練プログラム(以下、肥前式)を参考に、肥前式のテキストを鳥取療育園で実施しやすいようにアレンジし、子どもの行動変容を促す保護者の関わり方についての講義と個別課題についての毎日の記録をもとに全員で話し合うという内容で実施しています。スタッフは、同園の医師、児童指導員2名で行っています。1クラスの参加者は3名で毎週1回・全10回のプログラムと終了1ヶ月後のフォローアップを1クールとしています。

 テキスト

 マニュアル

2)子育て教室の効果
 子育て教室での講義および個別の課題の検討を通して、子どもと自分の関わりを客観的に見ることが出来たという参加者の感想を得られました。子育て教室の前後にTK式診断的新親子関係検査を実施しましたが、教室前後で比較すると全体的に得点が増加し、保護者の適切な養育姿勢の高まりがうかがわれました。

TK式診断的新親子関係検査(平均値)
(※点数が高いほど適切な関係にあると判断される。)

 また、親の関わりで子どもの行動が変化することを経験し、保護者のストレスは減少しています。取り組む目標行動の「重要度・達成度・満足度」にも変化が見られ、保護者は子どもの行動が改善したと評価しています。

目標行動に関する親の重要度・達成度・満足度調査(平均点)

 子育て教室で具体的な目標を定め、他の参加者やスタッフと一緒に継続して取り組んでいった結果、保護者が子どもの行動が変わる事を実感し、手応えや自信を感じることが出来ることが本プログラムの特徴です。

■保護者を精神的に支える支援(鳥取県立皆成学園)

皆成学園の取り組み
 皆成学園は県中部に位置する県立の知的障害児入所施設です。当園では自閉症を中心とした発達障がいのある就学前の児童を対象とした児童デイサービス事業も実施しています。児童デイサービスでは、児童本人への支援、家族支援、児童本人が通う保育所等への支援、地域支援を行っています。

1)児童本人への支援
 活動には個別活動と小集団(1グループ5名)活動の2つの活動があります。
 個別活動では、認知の育ちや学習態度の形成を促すことを目的として、個別の認知発達に応じた課題を設定し、支援者と1対1での学習を行っています。

 個別活動

 小集団活動では、目的のある行動の形成、コミュニケーション能力の向上、仲間意識を育てること等を目的として、歌遊び、プレスクール、サーキット、製作、おやつ、運動の中から、1グループ4つ程度の活動を行っています。

 プレスクール

2)家族への支援
 ご家族に対しては、ピア・カウンセリングや勉強会を実施しています。
 ピア・カウンセリングは保護者同士が悩みを出し合ったり、子育てに必要な情報を交換したり、家庭での取り組みを紹介したりする場となっています。

支援グッズ例

 また、テキスト等を利用した勉強会を通じて、発達障がいの特徴や特性を理解し、対応の仕方や上手な付き合い方や育て方について学んだり、サポートブック(pdfファイル)を作成したりします。このサポートブックは就学先や新担任等に子どもの特徴や配慮の必要な点を理解してもらうために活用されます。
 最終的には保護者自身が問題を解決できるよう寄り添い、支援していくことを大きな目的としています。

3)児童本人が通う保育所等への支援
 児童本人が通う保育所等へ訪問したり、担当保育士等の見学を積極的に受け入れています。情報や支援を共有していくことで、より効果的な支援が実施出来るためです。

4)地域支援
 発達障がいの理解、支援の知識・技術の習得を目的として、県中部地区内の保育所・幼稚園の保育士等の研修を受け入れています。研修者は週1回6ヶ月間、当園の支援手法を実際に体験してもらう形で学んでもらっています。
当デイサービスは、これら多方面からの支援により、児童と保護者が家庭や地域で暮らしやすくなることを大きな目的として実施しています。

鳥取県:http://www.pref.tottori.lg.jp/
子育て王国推進局:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=34826
子ども発達支援課:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=101065
総合療育センター:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3482
鳥取療育園:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3488
皆成学園:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3476