団体の取組事例「タイガーマスク基金の活動について」

更新日: 2013年4月15日

 2006年にファザーリング・ジャパンという父親支援のNPO法人を立ち上げ、男性育児(イクメン)の支援活動をする中で、私は社会的養護のきびしい現実、保護者のいない児童や増え続ける虐待やDVの現状を知り看過できなくて、2011年3月にタイガーマスク基金のプロジェクトを立ち上げました。当初は寄付金を集めて施設を退所する子ども・若者の自立支援、また個々に支援活動をする団体等をサポートしてきました。そして2012年12月、さらなる事業の拡充を目的にタイガーマスク基金はNPO法人として独立し、再スタートする運びとなりました。

 タイガーマスク基金は、児童養護施設などの退所者や社会的養護が必要な子ども・若者を支援するとともに、広く一般にこの問題を提起し、児童養護施設や自立援助ホームなどが抱える課題、係る法律・政策の改善ひいては児童虐待やDV予防の啓発事業などを展開し、この問題の根本解決を図ることを目的とするNPOです。

 具体的な事業としては子ども・若者支援事業として、
(1)寄付を募り自立支援金を給付する事業(対象:児童養護施設や自立援助ホームの退所者本人、子ども・若者の自立を支援する団体など)、
(2)各NPOとの連携において学習支援、職業訓練、家族形成力養成、社会貢献体験など、(3)企業・事業所との連携において雇用の確保・人材育成、
(4)一般サポーターの育成による若者支援モデルの構築などを企画・実施していきます。
 これら事業の実績は、平成23年度に児童養護施設の退所者本人22名、児童養護施設で生活する児童および退所児童への各種自立支援事業を展開している16法人に助成金を給付しました。平成24年度についても23年度を上回る申し込みをいただいているところです(平成24年3月現在)。

 また、児童養護施設の実態(子どもの置かれている情況、施設職員が抱える課題、地方間格差など)や、子どもの退所後自立における問題点(アフターケア)について広く一般に報せることも重要だと考えています。そこで広報・啓発事業としてこれらをテーマに、
(1)勉強会・セミナー・シンポジウム等の開催、(2)メディアを活用した広報PR活動、(3)交流会(サロン)など、学びと出会いの場づくり等にも取り組んでいきます。

 一般への勉強会はこれまでに東京や大阪で計10回開催(2013年4月現在)。下記がテーマです。
・「知っていますか?児童養護施設~児童養護施設の現状と問題点」(東京)
・「知っていますか?児童養護施設~子どもたちが自立するために必要なこと」(東京)
・「児童養護施設についてもっと知りたい!~児童養護施設の基礎知識」(大阪)
・「ランドセルだけじゃない!~社会的養護の現状と課題」(岐阜)
・「子どもシェルター~今夜帰る場所がない子どもたちがいることをご存じですか?」(東京)
・「暴力の連鎖を止めよう!~男性主体で考えるDVと児童虐待」(大阪)
・「子どもの虐待に対して、いま、私たちができること」(東京)
・「虐待の家庭的背景と、地域での子育て支援」(東京)
・「社会的養護の課題と将来ビジョン~施策の最前線に聞く~」(東京)
・「企業が取り組む効果的な社会貢献~児童養護施設を支援する各企業に学ぶ」(東京)

 勉強会の参加者は毎回50名くらいで男女比は約半々。世代も10代から70代の方までと幅広く、職業も福祉関係者だけでなく会社員、学生、主婦(夫)、経営者、自営業、士業の方など多岐に渡ります。勉強会で学んだ後、参加者で福祉関係者以外の方の多くは「児童養護施設という名前は知っているが内情は初めて知った」「自立支援ホームや子どもシェルターなどの存在は初めて知りました」などと感想を述べます。

 これはまさに三年前の自分の姿であって、やはり社会的養護に関する情報が乏しく、一般の方が正しく理解するためにアピールが必要なのです。だからといってマスコミの情報発信量がすぐに増すわけでもないので、タイガーマスク基金では広報・啓発事業として勉強会を毎月開催、その様子をレポートしたり、施設出身者でいま社会にでて活躍する方を取材し「ロールモデルインタビュー」(http://www.tigermask-fund.jp/interview/index.html)としてウェブサイトに掲載し、理解者と共感者を増やす活動にも傾注。社会的養護の問題を「福祉というコップの中の嵐」に終わらせず、広く社会的な問題としてあらゆる立場の人が関心を持つことこそが課題解決にとっても重要だと考えています。

 タイガーマスク基金の事業はこれだけに止まりません。児童養護施設の子どもたちの支援は川の流れでいうと「川下」の問題。そこに流れ着いて来る子どもを減らすには「川の上流で起きていること」、つまり「虐待」や「DV」を減らしていくこともこの問題を根本解決するために必要なこととして事業目標に掲げています。被虐待児の救済はもちろんですが、子どもが生まれる予定の人や、子育て中の家庭を包括的に支援していく仕組みづくりを推進し、これ以上家庭での子育てが困難になって養護が必要な子どもを増やさないためにも「川上」での子育て支援活動にも傾注しています。

 以上がタイガーマスク基金の事業概要ですが、これらの事業を継続していくには資金が必要です。私たちは会員や篤志家からの寄付、各種助成金だけに頼らず、企業との連携を模索しています。これまでの実績としては、下記があります。
・コンビニチェーンでタイガーマスクキャンペーンを期間限定で実施。売上の数%を寄付
・虐待が発見されやすいと言われる子どもの歯。東京の歯科医で検診料の中から寄付
・タイガーマスク基金の概要がパッケージに載る衛生マスクを制作。売価の1割が寄付
・飲料の募金対応型自動販売機をメーカーと製作。企業などで設置してもらい売上の中から寄付  などです。
施設の子どもたちへの支援や寄付金集めのCRM方式(コーズ・リレイテッド・マーケティング)など、社会的養護に対する日本企業のCSR活動例はまだ少なく、今後その底上げを図ることもタイガーマスク基金の重要な使命と考えています。企業の担当者と話をすると「ただ寄付をするだけなく、社員がボランティアで汗をかいて気づきがあったり、会社の本業にとってもプラスになるようなアライアンス(事業提携)が組みたい」という意見も多いので、施設サイドの事情などを調整しながら日々さまざまな企業タイアップ案を考えています。

 またタイガーマスク基金では、社会的養護に関する法律や制度の改善が必要なものに対して意見書・声明文を出したり、国や自治体に政策提言も行っていきます。かつて父親支援NPOの事業で、「父子家庭支援」を行い「児童扶養手当法」を改定することができたので、同じ手法で議員などにロビー活動を行い、いちばん弱い立場の子どもたちの視点で、声を挙げられない子どもたちの代弁者となって施設の環境整備や自立支援、権利保護などを訴えていきたいと考えています。

  子どもは親を選べません。実の親から見捨てられ不幸にも施設で暮らすようになっても、施設の職員だけでなく、広く社会に(血は繋がってなくても)信頼できる大人が身近にいる。自分たちを支えてくれているのだと分かってもらえれば彼らもいつか自分の人生に希望を持ってくれると私は思います。タイガーマスク基金では、「可哀想だから支援をする」のではなく子どもたちに「人生の可能性と楽しさを伝える」ことを基本理念とし、「子どもたちから信頼される大人」たる支援者を増やし、多様な子どもたちの自立をサポートする活動を継続していきたいと思います。

 「自分の子どもだけが幸せな社会などない」。
 三人の子どもを育てる親としてまたひとりの市民として、私はそう考えます。

 児童福祉の専門家でもない私たちですが、支援のネットワークを強化し、もっとも弱い立場で声をあげられないでいる子どもたちを救い、社会の貴重な人財である若者たちの自立を応援し、私たちの社会の希望ある未来を創っていきたいと考えます。

http://www.tigermask-fund.jp/