団体の取組事例多胎育児サポートネットワーク -多胎児の健やかな成長を願って-

更新日: 2004年1月1日

■多胎児とは

 多胎児という言葉はまだそれほど一般的ではありませんが、双子・三つ子・四つ子・五つ子など、一回の妊娠で複数の出産につながる児の総称です。多胎児のことを語る場合、それに対し一般の出産児のことを単胎児という言葉で区別しています。

■多胎育児サポートネットワークとは

 子どもを産み育てていくにあたっては、社会全体が子どもの健全な成長のためにさまざまな角度から育児をサポートしていく必要があると思われます。行政が母親学級・育児教室などをはじめとした、単胎児に対する育児支援が充実しつつある中で、より育児が困難である多胎児家庭には適切な指導が十分になされていないという現実を、早急に改善して欲しいと願っています。
 多胎育児サポートネットワークは多胎児を産み育てる家庭への支援が広がることを願い、そのために必要と思われるすべての事に関わっていこうという目標を掲げ、2003年5月に発足した非営利任意団体です。

■多胎妊娠・出産・育児における問題点

日本では現在、年間約119万人の子どもが生まれていますが、そのうち約2万3千人が多胎児です。(平成12年度データ)ほぼ100件に1~2件の割合で多胎出産となるという数字です。もともと日本は諸外国に比べ双子の出産率は低い方でしたが、近年不妊治療の普及や医学の進歩により、1993年以降多胎出産はずっと増加傾向にあります。
 単胎と多胎の妊娠・出産・育児は、単に「赤ちゃんの人数が増えただけ」という事だけで済まされない大きな違いや問題があります。

妊娠・出産

 妊娠中毒症をはじめとし、合併症などの発症度が高いということが明らかです。胎盤を共有する双胎が、特有な病気を合併すること(双胎間輸血症候群や胎児の体重差)などは、進行すると深刻な危険があります。また切迫流・早産の危険が高く(ふたごの約半数、三つ子の76%が早産になります)、出産時以前の入院の期間が長い傾向(約70%)にあります。
 多胎の赤ちゃんの死産率(妊娠22週以後)は単胎の約6倍、早期新生児死亡率(生後7日以内の死亡)は約7倍と、単胎に比較して高くなっています。また、子どもに障害を持つ割合も単胎に比べ約6倍高くなります。さらにふたごの出産は大変難しく、例えば一人を出産したあと、二番目の赤ちゃんの心音が悪くなったり、胎盤が剥離したりして、お腹にいる赤ちゃんが危険になることがあり、経膣分娩を試みていても、約20%の方が帝王切開になっています。

育児

 一度に、複数の赤ちゃんの世話をするという事は、育児者にとって精神的にも肉体的にも大きな負担があります。  育児に関わる時間が単胎児の場合に比べ優位に長いので、一日中時間に追われます。そのため疲労感、睡眠不足を訴える方も単胎の場合より多いというデータも出ています。日々の生活にゆとりはなく、一時的にお母さん同士のコミュニケーションが取りにくく、孤独な育児に陥りやすくなります。
 こうした劣悪な育児環境が続くと、お母さんの精神状態は非常に追い詰められてしまうのです。わが子に対する虐待へと進行するような深刻なケースもあります。特徴的なのは多胎児のうちの1児のみに虐待が行われるという事です。二人三人を無意識のうちに比較する事によって、泣き虫・病弱・障害等、何らかの育てにくい要因がある児の方にのみ、虐待が及ぶという点です。  また虐待の原因のひとつとして、何らかの原因で一人だけがNICUへの入院が長期に及び、新生児期に母子間の十分なスキンシップが一人だけに図れない状態にあったということが指摘されています。この問題については、発行誌「ツインズぷらす」においても愛育病院新生児科部長の加部一彦先生に執筆いただきましたが、そういうことに問題意識をもち、医療サイドの対応がなされているケースはまだ不十分です。
 ただでさえ子どもを育てにくい社会になっているといわれる時代ですが、養育に金銭的な負担が大きいということも、多胎育児においては深刻な問題です。単純にミルク代や紙おむつ・衣類など、最低限必要なものについてもすべて同時に人数分の出費が、家計を圧迫します。

 こうした問題があまり表面化しないのは、多胎育児家庭の絶対数が少ないという事も上げられますが、母子保健に関わる専門家が育児の実態を把握する機会が極端に少ないという現実があるからではないかと思われます。多胎児を産み育てている家庭への支援は、個人が力を尽くしても簡単に片付く問題ではありません。

 このように、日本全体からすればわずかな多胎児家庭ではありますが、子どもを産み育てるという事におけるさまざまな問題が集約されており、全国的な多胎育児支援は重要な課題であると思われます。
 残念な事に多胎育児に関しては、両親が納得のいく情報は十分でなく、不安や悩みなどを緩和してくれる行政サイドからの支援もいきわたっているといえる状況ではありません。そんな中、多胎児の親同士が励まし、癒しあい、情報交換の場として活動しているのが、全国に100前後あろうかと思われる多胎育児サークルの存在です。サークルによってはすでに地域での独自の多胎育児支援を実践しているものもあり、また行政との協働による支援を働きかけているものもあります。しかしこれまで、各地に点在するサークル間のつながりはごく限られていました。
 多胎育児サポートネットワークでは、そうしたつながりの希薄だったサークル間の多胎育児支援に関する情報交換を助け、サークルと協力し合いながら全国的な多胎育児支援を実現するための活動も広げていきたいと考えています。

現在の活動

1.「ツインズぷらす」という多胎に関する情報誌の発行(隔月発行)
2.相談電話・おしゃべり電話の対応(毎週火曜日) TEL. 03-5261-8915(10時から15時まで)
3.多胎育児支援が実践されるために何が必要か、どのような働きかけをすべきかについて意見交換するためのメーリングリストの開設
4.多胎育児サポートネットワークホームページの公開
   http://www.tatai-ikuji.jp/top-f.htm
5.多胎育児サークルリーダー研修会の開催(2003年11月15・16日に第一回を開催。今後年1-2回開催予定)
 今回の多胎育児サークルリーダー研修会では、多胎育児サポートネットワークのスタッフのほか、全国のサークルの代表やスタッフが18名参加し、今後の行政との多胎育児支援の協働をテーマに、講演を聴いたり、ディスカッションしつつ情報交換を行いました。

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多胎育児サークルリーダー研修会