学会等報告ステップファミリー支援のための国際セミナー報告

更新日: 2014年10月23日

■家族支援専門家のための国際セミナーが目指したもの

9月13~14日の週末に、「ステップファミリー支援に必要な知識とスキル-米国の教育プログラムを学ぶ2日間」と題するセミナーが明治学院大学白金キャンパスにおいて開催されました。2001年から活動を展開しているステップファミリー支援団体、ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン(SAJ)が、国際交流基金・日米センターの助成を得て実施したものです(筆者は事業担当責任者)。
親の再婚などによって子どもが親の新しいパートナーとの関係(継親子関係)をもつようになった家族を「ステップファミリー」と呼びます。現代の日本には、ステップファミリーが増えていると推定されますが、その数も正確には捉えられておらず、その家族関係の独自性についての理解はなかなか進んでいません。それゆえに、家族を支援する専門家の間にも、ステップファミリー独自の支援スキルが共有されていないのが現状です。当事者にとっては、ステップファミリー特有のニーズに応えてくれる専門家が希少なため、多数派の初婚家族と同様に扱われてしまうという悩ましい状況が続いています。

そこで、ステップファミリーの研究・支援実践の先進国アメリカのエキスパート3名を招聘し、丁寧に指導していただく家族支援者向けの画期的セミナーを開催したのです。SAJがアメリカからゲスト講師を招くのは3度目であり、前回2011年の「日米ステップファミリー会議」の報告書については愛育ねっとに記事(リンク先:http://www.aiikunet.jp/exposion/manuscript/18280.html)を載せていただきました。
3年前の「日米ステップファミリー会議」がアメリカのステップファミリー研究者と日本の研究者による成果の共有という意味あいが強かったのに対して、今回のセミナーは家族支援、家族臨床、家族教育の現場にある専門家向けにステップファミリーのための臨床や教育の実践についての学びに焦点をあてました。親子関係に加えて継親と継子の関係ができたとき、親や継親は子どもに対してどう振る舞えばよいのか、どんな支援が有効なのかを具体的に知る機会を提供することが開催の目的でした。

写真1.ペーパーナウ氏の講演の様子

■アメリカの研究や臨床に裏打ちされた知識とプログラムへの招待

米国オーバーン大学に拠点を置くNational Stepfamily Resource Centerの代表であり、同大学の子ども・青年・家族センター所長でもあるフランチェスカ・アドラー=ベーダー氏、マサチューセッツ州ハドソンで個人開業する臨床心理士であり、ハーバード大学医学部・精神医学科の心理学指導員も務めるパトリシア・ペーパーナウ氏、ミズーリ大学人間発達・家族研究学科助教授で新進気鋭のステップファミリー研究者、チェルシー・ガーノー氏の3人をゲスト講師としてお招きしました。

1日目午前は、ガーノー氏が膨大なアメリカのステップファミリー研究の成果を実践に結びつけて整理・解説してくれて、このセミナーの導入役を果たしました。それを受けて午後には、ステップファミリー発達段階説で日本でも著名なペーパナウ氏が、豊富なステップファミリー臨床経験に基づいて書かれた近著『ステップファミリーをいかに生き、育くむか-うまくいくこと、いかないこと(Surviving and Thriving in Stepfamily Relationships: What Works and What Doesn’t)』(Routledge, 2013)のエッセンスを日本向けにアレンジして丁寧に解説してくれました。ステップファミリーは初婚家族となぜ、どのように違うのか、多様な具体的事例を使って説明し、当事者に気づきをもたらすヒントをたくさん提供してもらいました。

2日目は、ステップファミリー研究者でもあるアドラー=ベーダー氏とその下でステップファミリー向けの教育実践に携わってきたガーノー氏の二人が、アドラー=ベーダー氏によって開発されたステップファミリー向け教育プログラム「スマートステップス(SmartSteps)」を中心に、アメリカで利用可能な教育資源をじっくりと紹介してくれました。映画のシーンや独自に製作されたビデオ映像資料なども駆使し、支援実践に使えるグループワークのテクニックを参加者に直接体験してもらう場にもなりました。

写真2.アドラー=ベーダー氏とガーノー氏によるビデオ教材を使った講義

■日本の研究者・実践家からのコメントと参加者の声

2日目の最後には、日本から3名のコメンテーターに登壇いただきました。離婚後の家族教育プログラムの導入を精力的に進める小田切紀子氏(東京国際大学教授)、日本で先駆的な離婚後の親子面会交流支援事業を展開してきた桑田道子氏(Vi-Project代表)、日本のステップファミリー研究を推進してきた菊地真理氏(大阪産業大学准教授)が、それぞれの立場から日本の現状分析と今回のセミナーの意義についてコメントしました。それを受けて6人の登壇者全員が勢揃いして会場からの質問やコメントに応えるかたちで総括的な議論が展開されました。
このセミナーには、北海道から九州まで全国の心理臨床家、家庭裁判所・児童相談所・子ども家庭支援センターの職員、マスメディア関係者、学生など多様な立場で家族に関わる方々70名近くの参加者があり、予想以上に社会のニーズが大きいと感じました。参加者の方々からはおおむね好評をいただき、「スマートステップス」のような新しいプログラムの日本への導入を期待する声も数多くいただきました。当日の会場にはNHKのテレビ取材カメラが入り、講師へのインタビュー取材などもありました。社会の関心が少しずつステップファミリーに向けられてきていることを感じます。
このセミナーが契機となって、ステップファミリーについての知識や支援スキルがさらに社会に広まることを期待しつつ、次の展開を準備中です。来年度は、国際交流基金・日米センター助成プロジェクトの第2弾として、ステップファミリーをめぐる家族支援政策をテーマにした国際シンポジウムを企画しています。さらに多くの皆さんの参加を楽しみにしています。

写真3.最後の総括ディスカッション

■関連サイトへのリンク
・ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン(SAJ)
・National Stepfamily Resource Center(NSRCの英語サイト)