学会等報告「第7回子どもの心の診療医研修会」の概要

更新日: 2013年9月18日

・日時:平成25年8月18日9:50~16:30
・場所:全国市町村会館(東京都千代田区永田町1-11-35)
・対象:子どもの心の診療に関心を持つ一般小児科医、一般精神科医など
・主催:厚生労働省、一般社団法人日本小児科医会、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会
・目的:近年、落ち着きがないなど気になる子どもの増加や子どもの虐待、不登校、自傷行為などの様々な「子どもの心の問題」が注目されるているが、一方で子どもの心の診療に関わる医師は少なく、その養成が求められている。本研修会では、子どもの心身の健康な発達支援と情緒・行動の問題や精神疾患の治療に関する研修を行うことを目的としている。

毎年開催されている本研修会は7回目を迎え、今回124名の参加があり、会場は満席で熱気が溢れていた。地域にて日々診療に取り組む医師が日本全国から集まった。
松平隆光会長(日本小児科医会)が冒頭挨拶し、わが国では子どもにかける予算がフランスの1/20と少ないこと、現在、小児科関連団体、日本医師会等が共同し、「成育基本法」の制定を目指し精力的に活動していること等を紹介した。そして、本研修会を通じ成果を日々の診療に反映してほしいとした。
続いて、小倉加恵子課長補佐(厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課)が「母子保健行政の最近の動向」と題し、施策の現状を分かり易く解説した。その中で、平成26年度で終了する「健やか親子21」の次を見据えた方向を考えるべき時期に現在来ていることに言及した。
次いで、作田亮一教授(獨協医科大学越谷病院小児科・子どものこころ診療センター・センター長)が、「不登校の診療にあたり知っておきたい身体疾患:心身症と関連して」について解説した。様々な身体疾患や心身症の理解の仕方と診療の実際について概説し、小児科外来で可能な心理社会的要因へのアプローチについて、時間的余裕のない一般小児科外来の中では難しいとしながらも、話を聞いてみて、自分の手に余ると感じる場合には、専門施設を紹介するのも適切な対応であること、子どもと家族の健康度が比較的高い場合は、話を聞いて「大変だったね」と共感するだけでも改善につながることがあること等を説明した。最後に「子どもの不安を高めない」「相手の身になって子どもと家族が取り組めるようにする」「家族を無用意に責めない」の3点に注意しながら対応すべきと結んだ。
休憩を挟み、午前中の後半は佐藤宏平准教授(山形大学地域教育文化学部/臨床心理士、スクールカウンセラー)が「不登校の見立てと家族療法的介入」について解説した。特に家族内の関係のあり方に注目し「家族内の悪循環を減らし、良循環を増やすアプローチ」が大切と指摘した。このために家族が学んでほしいのは、子どもの長所、よいところ、頑張っているところ、好ましい変化に気づくことであるとした。不登校児童生徒の見立てについては、本人・家族に関する基本情報をおさえた上で、再登校レディネスアセスメントシートを用いて評価する方法を紹介した。最後に、支援のポイントとして「自らが重要な他者となる関わりを通じた解決志向の視点での関わり」「前者の視点で関わってくれる重要な他者を、子どもの生活環境に作り出すこと」「行動範囲の拡大から、学校的なモノへの接触、さらには学校の周辺(夜間、別室等)から中心(教室)へ接近していくプロセスを通じた支援」「保護者、学校、専門機関の連携による支え」「小児科医師に求められる役割として、治療者としての役割とスーパバイザー(まとめ役、全体の俯瞰者、マネジメント役)」があることを述べた。

昼食休憩の後再開された午後の部は、藤井和子氏(まめの木クリニック・発達臨床研究所のケースワーカー)が「発達障害を持つ子どもたちの理解と対応~ペアレントトレーニングプログラムから~」について解説した。「発達障害は目に見えない障害のために周囲から理解されにくい子どもたちである」とした上で、医療、教育、療育、家族支援への早期介入が不可欠であると説明した。いくつかの特徴ある行動様式をはじめ脳機能の一部に不全があると考えられる発達障害の子どもたちに対しては、親自身も理解しがたく、親としても幾多の困難を抱え、疲弊しがちであると説明した。このような認識に立ち、演者は10年以上前から米国カリフォルニア大学ロスアンゼルス校、同バークレー校等でAD/HD児への家族支援プログラムを学び、それらを元に日本に適用できる形に工夫し、「ペアレントトレーニング・プログラム」を開発した。全10回から成るこのプログラムを紹介し、具体的な対処法として「行動を整理する」「子どもの協力を引き出す」等についてポイントを解説した。子どもの協力を引き出す上手な指示の出し方として「C:Close(近づいて)」「C:Calm(おだやかに)」「Q:Quiet(声のトーンを抑えて静かに)」の3つのポイント、CCQを強調した。
休憩を挟み、午後の最後は山田不二子医師(山田内科胃腸科クリニック副院長)が「性虐待」について解説した。山田医師はNPO法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワークの理事長を務めており、豊富な経験と資料を元に説明した。特に、第一発見者としての医師の役割を強調した。性虐待に関する日本の課題としては、同居人性虐待と家族外性虐待が存在するとして、子どもへの性加害の非親告罪化が必要であること、家族外性虐待も児童虐待通告の対象とすること、初期捜査・初動捜査のための多機関連携チーム(MDT)を合法的な組織として制度化すること、子どものためのワン・ストップ・センター「子どもの権利擁護センター(CAC)」を設置することの4点を強調した。
最後に衞藤隆日本子ども家庭総合研究所長が閉会の辞を述べ、参加者、演者、関係者の労をねぎらい研修会を終了した。