解説レポート児童ポルノ禁止法の改正について

更新日: 2014年9月1日

平成26年6月18日、第186回通常国会において、いわゆる議員立法により、児童ポルノ禁止法が改正され、同年7月5日から施行されました。
ここでは、本改正の背景を紹介するとともに、改正のポイントを説明したいと思います。

1.児童ポルノ禁止法とは
児童ポルノ禁止法とは、本改正後の正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」と言います。
この法律は、児童に対する性的搾取や性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、児童買春、児童ポルノに係る行為を規制し、処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることによって、児童の権利を擁護することを目的とするものです。
この法律は、国内における「援助交際」や国外における児童買春ツアーが社会問題となり、児童ポルノの製造流通拠点として日本が厳しい国際的非難にさらされていた中、平成11年に議員立法により成立し、その後、平成16年に法定刑の引き上げや処罰範囲の拡大などの改正が行われました。

2.平成26年改正の背景
平成16年の改正から約10年間が経過し、この間、インターネット等の発達により児童ポルノ被害に遭う児童の数が増え続けました。児童ポルノ事犯の検挙件数は、この10年間で10倍近くに増加し、平成25年に過去最高(1,644件)を記録しました。年間に事件を通じて新たに特定された被害児童数も平成25年に過去最高(646人)を記録しており、その半数以上が中学生以下の児童です。
また、これまで日本では、児童ポルノのいわゆる単純所持(他人に提供する目的を伴わない所持)については処罰規定がなかったところ、国際社会から、日本においても単純所持罪を設けるべきとの強い要請がありました。
こうした状況に鑑み、5党の議員から成る「児童ポルノ禁止法改正に関する実務者協議会」が設置され、議論が行われた結果、議員立法による改正法案が国会に提出され、平成26年6月に衆・参両議院で審議の上可決されました。

3.改正のポイント
(1)児童ポルノの定義が一部変更されました。
児童ポルノの定義は、児童ポルノ禁止法第2条第3項に定められていますが、そのうち第3号に定められている児童ポルノの定義に「殊更に性的な部位が露出され又は強調されているもの」という要件が付け加わりました。
これにより、児童ポルノの定義の概要をまとめると、写真、映像、電子データを記録した物などで、①性交や性交類似行為をしている児童の姿を描写したもの、②児童が他人の性器を触ったり、他人が児童の性器等を触っている児童の姿を描写したもので、性欲を興奮させ、刺激するもの、又は③衣服の全部又は一部を着けていない児童の姿で、殊更に性的な部位が露出又は強調されているもので、性欲を興奮させ、刺激するもの(すなわち、①~③のどれかに該当するもの)となります。

(2)一般的禁止規定が設けられました。
児童ポルノ禁止法第3条の2に、何人も、児童買春をし、又はみだりに児童ポルノを所持し、児童ポルノに係る電磁的記録を保管し、その他児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならない旨の一般的禁止規定が新設されました。
これは、これらの行為が児童の権利を著しく侵害するものであることから、これらの行為が許されるものではないことを理念として宣言する規定です。

(3)自己の性的好奇心を満たす目的での所持・保管罪が新設されました。
児童ポルノ禁止法第7条第1項に、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持し、又は児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて所持又は保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとする罰則が新設されました。
このような改正がなされたのは、これまでは、児童ポルノの製造、提供や提供目的の所持等を処罰対象としてきたところ、このような児童ポルノの供給側を中心とした処罰だけでは児童ポルノを根絶することはできず、需要側をも処罰対象とすることが必要であると考えられたことによるものです。
この罪が成立するためには「自己の性的好奇心を満たす目的」が必要ですので、報道目的、医療の記録目的の場合や、親が子どもの成長の記録や思い出として子どもの写真を持っている場合等には処罰されることはありません。
また、「自己の意思に基づいて所持又は保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る」とされているので、例えば、児童ポルノを電子メールなどで一方的に送り付けられ、それに気付かずにパソコンから削除していなかった場合なども処罰されることはありません。
この罪については、本改正の施行日(平成26年7月15日)から1年間は適用しないと定められ、具体的には平成27年7月15日から適用が開始されることとなりました。
これは、この1年の間に、自己の性的好奇心を満たす目的で所持等している児童ポルノ及びこれに係る電磁的記録について、適切に廃棄等の措置を講ずることのできるよう猶予期間を設ける趣旨です。

(4)盗撮により児童ポルノを製造する罪が新設されました。
第7条第5項に、ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処することとする罰則が新設されました。
「ひそかに」とは、「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり、児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例です。
これまで、児童ポルノの製造については、他人に提供する目的での製造行為を処罰する規定と、児童に第2条第3項各号の姿態をとらせてこれを写真等に描写することによる製造行為を処罰する規定が置かれていましたが、これらの行為以外でも、盗撮により児童ポルノを製造する行為は、通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや、発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であることなど、その行為態様の点において違法性が高く、このような悪質な態様により児童ポルノを製造する行為は、当該児童の尊厳を害する行為であるとともに、児童を性的行為の対象とする風潮が助長され、流通の危険性を創出する点でも非難に値することから、罰則規定が新設されたものです。

(5)心身に有害な影響を受けた児童の保護のための施策の検証等についての規定が新設されました。
児童ポルノ禁止法第16条の2が新設され、社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとされました。
また、社会保障審議会又は犯罪被害者等施策推進会議の厚生労働大臣又は関係行政機関に対する意見具申及び当該意見具申があった場合の厚生労働大臣又は関係行政機関が講ずる措置に関する規定が置かれました。

(6)インターネットの利用に係る事業者の努力義務規定が新設されました。
児童ポルノ法第16条の3が新設され、インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその閲覧等のために必要な電気通信役務を提供する事業者は、捜査機関への協力、その管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとされました。
児童ポルノ事犯のうち、インターネットを利用した事犯は、平成25年で検挙件数の約68%を占めています。児童ポルノが一たびインターネット上に流出すると、容易に国内外に拡散されて削除不能となり、被写体となった児童の権利回復が著しく困難になることから、このような規定が設けられたものです。

*本改正法やその要綱等は、法務省のホームページでも見ることができます。
詳細はこちら⇒http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji11_00008.html