解説レポート「子ども・子育て支援新制度と保育サービスの新展開」(Ⅲ)

更新日: 2014年6月13日

Ⅲ地域型保育給付等の新たな保育システム

本シリーズの冒頭では、子ども・子育て関連3法の重要なポイントの第二として、乳幼児期における保育サービスの体系に「地域型保育給付」という仕組みが設けられたこと、そして第三として基礎自治体それぞれの地域の実情に応じた様々な子ども・子育て支援をすすめるための「地域子ども・子育て支援事業」の仕組みが設けられたことをあげた。これによって、施設型集団保育に限らず、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育への給付によって、また様々な子ども・子育て支援事業を展開させることによって、地域における多様な保育ニーズに対応する本格的な仕組みが広がることとなった。以下に、この内容について触れていくこととする。

1.地域型保育給付

(1)地域型保育給付の特徴
新しく規定された地域型保育給付は、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育で構成される。図1で示した保育の態様に沿ってみるならば、従来から多くみられた家庭外の集団保育として小規模保育施設、事業所内保育施設が含まれるとともに、家庭外並びに家庭内の個別保育として家庭的保育事業、居宅訪問型保育が加わったことが特筆される。
家庭的保育事業は、既に半世紀以上前から一部の地方自治体が3歳未満の乳幼児にふさわしい保育の態様として制度化し、約100を超える市区町村が独自にすすめてきた歴史がある。また、児童福祉法の改正により2010(平成22)年から国が家庭的保育事業として制度化した経緯がある。この度のさらなる制度化によって、広く全国の地方自治体に普及することが期待できる。一方、これまでの国並びに地方自治体において制度化されることがなかった家庭内の個別保育に該当する居宅訪問型保育が給付の一翼を担うこととなったことは、特筆すべきことである。
この地域型保育給付に共通する特徴は、第一に保育する子どもの人数が少ないことである。施設型給付に属する従来の施設型集団保育では子どもの定員がおおむね20人以上であり、100人あるいは200人を超える施設も少なくないのに対し、少人数の単位で集団的な対応よりも個別的な対応を配慮できる保育が可能な保育システムとして位置づけられている。第二に、対象となる子どもの年齢は原則として3歳未満の子どもということである。それぞれの事業では、3歳以上の子どもを保育することも不可能ではないが、制度上0歳、1歳、2歳の乳幼児のための保育給付という特徴を持っている。
このような特徴が示唆することは、地域型保育給付は施設型給付では対応しきれない待機児童対策の一環としてきわめて重視されているということである。主として大都市及びその周辺を中心に生じている待機児童の問題の最も重要な点は、保育所自体への入所が非常に狭き門となっているのではなく、主に0歳、1歳、2歳児の保育所への入所がきわめて狭き門となっているというところにある。これ以上大規模な施設型集団保育の環境を整えることは、環境的にも財政的にもメリットよりもむしろディメリットの側面が多い。また、今後さらに続く少子化の動向は、やがて施設型給付の対象となる施設への入所児数の総体的な減少をもたらす可能性もみられる。これまで非常にウェイトの低かった低年齢児にふさわしい保育環境を整えることは、今後施設型給付、地域型保育給付を通じてバランスのとれた保育サービスを考慮することができるとともに、今後の保育の量の見込みや保育の質を維持、向上させる上でも、期待される。とくに、低年齢時期の子どもたちにとってふさわしい家庭的で個別的な保育が営まれる環境の整備や今後の地域型保育給付の広がりの如何は、これまでの保育の態様や保育システムの見直しとともに、乳幼児期の保育のあり方や保育の質とも深く関わってくると考えられる。

(2)地域型保育給付の種類
具体的に四つの給付事業について、以下に述べることとする。全ての事業の開所時間は原則8時間とされているが、実際には小規模保育事業、家庭的保育事業ではそれを超える場合も多く、また居宅訪問事業での保育時間は、それらよりも短かったりフレクシブルなものになるであろう。

①小規模保育事業
保育を必要とする乳児または満3歳未満の幼児を少人数で、家庭的保育に近い雰囲気のもとで保育を行う事業である。小規模保育事業は、三つの型があるが、その基準は、表2の通りである。
小規模保育事業については、これまでにすすめられてきた多様な事業からの移行を想定して、A型(保育園分園、ミニ保育所に近い類型)、C型(家庭的保育(グループ型小規模保育))、B型(中間型)の3類型が設けられた。 いずれの場合であっても、利用定員は6人以上19人以下に限られる。

②家庭的保育事業
保育を必要とする乳児または満3歳未満の幼児を家庭的保育者がその居宅またはその他の場所において保育を行う事業である。利用定員は5人以下に限られる。職員数は、0~2歳児3:1であり、家庭的保育補助者が置かれている場合は5:2である。家庭的保育者は、保育士または保育士と同等以上の知識、経験を有すると市区町村長が認める者で、いずれも市区町村が行う研修を修了していることが求められる。 表2.にみるように、小規模保育事業C型との関連性が非常に高い。

③居宅訪問型保育
保育を必要とする乳児または満3歳未満の幼児を家庭的保育者が乳幼児の居宅において保育を行う事業である。この事業の対象となる乳幼児は、障害や疾病の程度を勘案して集団保育が著しく困難であったり、保育所の定員の減少や保育所の廃止等の後も保育を希望したり、母子家庭等で保護者が夜間や深夜の勤務に従事している場合等々である。職員数は、0~2歳児1:1である。この保育に従事する保育者は、ベビーシッターと呼ばれることが多いが、制度上は家庭的保育者と称され、必要な研修を修了し、保育士、保育士と同等以上の知識、経験を有すると市区町村長が認める者とされている。

④事業所内保育
企業や地方自治体の保育施設などで、保育を必要とする従業員の子どもと地域の子ども(乳児または満3歳未満の幼児)を保育をする事業である。この事業は、既に長年にわたり実施されていたものが、新制度に移行されたものである。

表2.小規模保育事業の類型別基準
A型 B型 C型
保育者数 保育所の配置基準
(註1)+1名
保育所の配置基準
(註1)+1名
0~2歳児3:1
(補助者を置く場合5:2)
保育者の資格 保育士
保健師又は看護師の特例を設ける
保育士数は1/2以上
保育士以外には研修実施
家庭的保育者(註2)
保育室の面積基準 0歳・1歳児1人当たり3.3㎡
2歳児1人当たり1.98㎡
0歳・1歳児1人当たり3.3㎡
2歳児1人当たり1.98㎡
0~2歳児いずれも1人当たり3.3㎡

(註1)保育所の配置基準は、0歳児3:1、1・2歳児6:1
(註2)市町村が行う研修を修了した保育士、保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村が認める者


2.地域子ども・子育て支援事業
子ども・子育て支援法に基づき、基礎自治体として子ども・子育て支援新制度を担う市区町村が子ども・子育て支援事業計画を策定し実施する事業が地域子ども・子育て支援事業である。その対象事業は、以下の通り13を数える。
①利用者支援事業
②地域子育て支援拠点事業
③妊婦健康診査
④乳児家庭全戸訪問事業
⑤養育支援訪問事業、子どもを守る地域ネットワーク強化事業(その他要保護児童等の支援に関する事業)
⑥子育て短期支援事業
⑦ファミリー・サポート・センター事業(子育て援助活動支援事業)
⑧一時預かり事業
⑨延長保育事業
⑩病児保育事業
⑪放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)
⑫実費徴収に係る補足給付を行う事業
⑬多様な主体が本制度に参入することを促進するための事業

①の利用者支援事業は、子ども・子育て支援を有効に推進するため、妊娠、出産そして子どもの育ちや子育てのすべてのプロセスに関わっているこれら様々な事業を包括的に視野に収め、適切に円滑にサービスを提供できるようにするためには、不可欠な事業と言える。具体的には、市区町村や地域において、必要な情報を集約し、利用者に対して情報を提供し、相談に乗り、具体的な支援に結びつける事業である。
13の事業の中には、これまで既に国の制度として事業化されていたものも多く含まれている。しかし、すべてがこの度の支援新制度の趣旨を深く踏まえてあらためて実践する意義を確かめる必要がある。とくに保育サービスの展開を考えるとき、すべての市区町村が地域子育て支援拠点事業、養育支援訪問事業、ファミリー・サポート・センター事業、一時預かり事業、延長保育事業、病児保育事業、そして放課後児童クラブのそれぞれの意義と役割を再確認し、事業計画を策定し、積極的に事業を展開することが期待される。

3.今後の課題と期待

現在各自治体において、各給付や支援事業の量的見込みについての検討が進んでいる中で、同時にその質の担保、つまり質の水準とその維持、向上という課題についても検討がすすんでいる。施設型給付に限らず、本稿でふれた地域型保育給付や地域子ども・子育て支援事業は、とりわけ質の担保を図る課題がさまざまに今後生じてくる。
この連載の冒頭にふれたように、新制度の中核にあって重要な役割を果たすのが、基礎自治体として位置づけられている市区町村である。都道府県とともに、いやそれ以上にその役割が期待される市区町村の間にみられる地域型保育給付、地域子ども・子育て支援事業に対する関心や重要性に関する意識の地域差は 大きい。とりわけ待機児童対策のウェイトの違いによって温度差がみられるように思われる。これらの新システムを待機児童対策の一環としてのみ対応させることは避けるべきである。子ども・子育て家庭にとって、それぞれの保育システムや保育の態様そして支援事業が非常に効果あるものとして活用されることへの期待や可能性も多くはらんでいることに留意したい。