解説レポート「子ども・子育て支援新制度と保育サービスの新展開」(Ⅱ)

更新日: 2014年5月1日

2012年に子ども・子育て関連3法が公布され、いよいよその施行の時期が約1年先の2015年4月に迫ってきた。本稿では、さらに2回にわたって今後の保育サ-ビスの展開に深くかかわる新制度の主要なポイントと今後の動向について述べていくこととする。本号では、施設型給付にかかわる内容について解説する。

Ⅱ大きく変わる施設型集団保育の仕組み

1.施設型給付
前号では、新制度の重要なポイントの第一に、乳幼児期における保育と教育のシステムとして施設型給付という仕組みが設けられたことをあげ、これまで、幼稚園、保育所、認定こども園が全く別の制度や仕組みで行われていたものが、幼保連携型認定こども園をはじめとする認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付の仕組みとなること、中でも、幼保連携型認定こども園は、当初は制度上新しく設けられるはずであった総合こども園に代わるものとして位置づけられるものとなり、今後施設型給付のなかでも特に注目されるシステムとなる、ということを述べた。
これまで長年にわたり保育サービスの基本軸とされ重視されてきたのが、施設型集団保育である。新制度ののもとでも、施設型集団保育の重要性は変わらない。しかし、その仕組みに大きな変化が加えられた。これまで、乳幼児の保育を担う保育所、幼児の学校教育を担う幼稚園、教育、保育を一体的に行う認定こども園は、法制度ごとに設置の目的や運用が異なってきた。今後もその運用については、各制度の下で実施されることに変わりはないが、新制度の下では保護者の申請とその後の手続き、さらに保育料の仕組みが共通化された。
具体的には、基礎自治体である市区町村が、子ども・子育て支援事業計画を策定し、子どものための教育・保育給付を行うこととなる。そのためには、まず子ども・子育て支援法第19条第1項で定める子どものための教育・保育給付の支給要件に該当する乳幼児を算出する必要がある。支給要件は、以下の三つに分かれている。
(1)第19条第1項第1号に該当する子ども:満3歳以上の小学校就学前の子ども
(2)同第2号に該当する子ども:満3歳以上の小学校就学前の子どもであって、保護者の労働または疾病その他の事由により家庭において必要な保育を受けることが困難なもの
(3)同第3号に該当する子ども:満3歳未満の子どもであって、保護者の労働または疾病その他の事由により家庭において必要な保育を受けることが困難なもの
保護者は上記の要件に沿って、わが子が満3歳以上の教育を必要とする子ども(第1号)、満3歳以上の教育と保育を必要とする子ども(第2号)、満3歳未満の保育を必要とする子ども(第3号)のいずれかで市区町村に保育の必要性の認定の申請を行う。市区町村はその認定にあたって、それぞれの認定基準に沿って、保育を必要とする事由、保育必要量、優先利用を判断し、保育の認定並びに認定証を交付する。以下、保育の利用までの利用手順は、図2のとおりである。保育を必要とする事由は、現行の保育所入所にあたっての”保育に欠ける”要件よりはやや幅広く設定されている。保育必要量というのは、子どもが教育・保育を受ける時間であり、長時間認定(週120時間を下限とする)と短時間認定(48~64時間を下限とする)の二つに区分される。優先利用に該当する例としては、ひとり親家庭、虐待やDV、特別の障害などがある。なお、この手続きは、施設型給付以外も同様である。

図2.新制度における保育を必要とする場合の利用手順のイメージ(政府資料)


実際には、どのようなイメージになるであろうか。たとえば第1号に該当する子どもは、短時間の幼稚園、認定こども園に通園し、第2号に該当する子どもは、長時間の保育所、認定こども園に通園し、そして第3号に該当する子どもは、同じく長時間の保育所、認定こども園に通園し、あるいは地域型保育給付の対象となるであろう。
保育料に関しても大きな変化がもたらされる。施設型給付も他の給付も同様であるが、国は公定価格の基準を設け、保護者が負担する保育料もこれに基づいて定められるが、言うまでもなく一律ではなくその所得の状況などに対応する部分が考慮される。この原稿の執筆段階では、まだ国の基準は定まっていない。
なお、来年4月の施行後、保育所のうち私立保育所については、これまでの国や地方自治体の負担金は、市区町村の保育の実施義務を担うことに基づく措置として委託費が支弁されることとなる。また、幼稚園はこの仕組みに入らず現行のまま事業を継続することも可能であるが、以下に述べるように、幼稚園の今後を考えるとき、新支援制度を担う役割も重要となるであろう。

2.幼保連携型認定こども園
以上の施設型給付にかかわる仕組みは、歴史を画する重要な変化ではあるが、しかし、新制度が提案され国会に上程された法案は、それ以上の画期的な内余を包含していたものであった。それは、乳幼児期の保育や教育を統合化し、一元化してすすめる幼保一元性 註1)の方向を目指している部分があったということである。
これまでは、0歳から就学前までの乳幼児で”保育に欠ける”と判断された子どもたちは、児童福祉法に基づいて設置されている児童福祉施設のひとつである保育所に通所する仕組みであった。また、就学前の教育を受ける子どもたちは、学校教育法に基づいて設置されている幼稚園に通園する仕組みであった。このように、わが国では、幼保二元性 註2)のもと、制度的に保育と教育は別の仕組みで営まれてきた。さらに2006年に就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(いわゆる認定こども園法)が公布され、幼保一体化 註3)の仕組みとして認定こども園が設置されてきた。わが国の幼児期の保育・教育施設は、したがって幼保三元性 註4)とも言うべき仕組みとなっていた。
わが国の施設型集団保育における幼保二元性の仕組みは、児童福祉法及び学校教育法に基づく二元性の堅牢な仕組みとして70年近くにわたって維持されてきた。しかし、国際的動向からみると幼保二元性は決して通例の典型的な仕組みではなく、幼保一元性を基本とする国々も多くみられた。たとえば、幼保二元性に対して古くは社会主義諸国では教育省系統による幼保一元性、また北欧諸国では福祉省系統による幼保一元性がみられた。近年では、生涯教育の視点あるいは乳幼児期の教育・保育環境への投資効果と人間形成や社会発展との関連性などに関心が高まり、図3にみるとおり、7項目のうち〇で示された統合化された項目を含む国も多くみられる 註5)
わが国においても、これまでたびたび幼保一元化の議論はなされてきた。その経緯の中で認定こども園制度が設けられたが、しかしそれは幼保一体化の一環としてすすめられたものである。ところが、この度の子ども・子育て新支援制度では、「法令=総合こども園法」「行政所管=内閣府」「保育施設=総合こども園」「基準・指針=総合こども園基準」「保育専門職=保育教諭」「保育内容・カリキュラム=保育要領」「保育料=施設型給付」という7項目の体系の全ての統合を視野においた総合こども園法案が当初上程されていた 註5)。その方向性としては、新制度のもとでは保育所も幼稚園もこれに統合化され、まさに幼保一元性による新システムが構想されていた。
しかし、政局の渦中でそれは廃案となった。それに実質上代わるものとして、認定こども園の一類型であった幼保連携型認定こども園が法改正によって新たな仕組みとして登場した。確かにその内容は、7項目中6項目にわたり、統合化されたものである。新制度のもとでは「保育専門職」の1項目のみが、保育士資格と幼稚園教諭免許状を併有する者として一元化されていないが、今後その統合につて検討することが付帯事項となっている。
いずれにしても、子ども・子育て関連3法のもとでは、保育所、幼稚園、認定こども園(幼保連携型認定こども園を含む)という幼保三元性が継続されることとなったが、しかし、総合こども園法案をもとにすすんできた経緯は乳幼児期の保育・教育の新時代を示唆する様々な状況を包含している。乳幼児にとってその最善の利益を十分に考慮し、また保護者にとってより望ましい子育て支援を展開する上で、施設型給付の中で幼保連携型認定こども園を充実していく方向は非常に重要である。施行後の行方が注目されるところである。

図3.諸外国における幼保一元性、幼保二元性の動向(網野武博ほか、2012に加筆)


註:
1)幼保一元性:乳幼児期の保育に関する「法令」「行政所管」「保育施設」「基準・指針」「保育専門職」「保育内容・カリキュラム」「保育料」に関する7項目の体系の一部乃至全てが統合されていること
2)幼保二元性:乳幼児期の保育に関する上記の7項目が二つの異なる体系に分離していること
3)幼保一体性:乳幼児期の保育に関する異なる体系の一部が機能的に拡大化され、融合 化されていること
4)幼保三元性:乳幼児期の保育に関する上記の7項目が二つ乃至三つの異なる体系に分離していること
5)図2は、2012年の筆者らの研究論文の引用であり、現在では総合こども園法の部分は幼保連携型認定こども園となっている。また他国においてもその後さらに統合の部分が増えている。

<以下、次号に続く>