解説レポート「子ども・子育て支援新制度と保育サービスの新展開」(Ⅰ)

更新日: 2014年4月1日

Ⅰ新しい時代に向けた保育サービスの多様化

1.子ども・子育て関連3法の成立
21世紀に入り、少子・高齢社会がすすむわが国の子ども・子育てをめぐる環境は、多くの課題を抱え、諸外国と比較しても子育てに冷たい社会と評価される面が多くみられるようになった。とくに、結婚、出産、子育てを希望してもそれを実現しにくい環境や、子育て中の保護者の負担感や孤立感の強さ、乳幼児期や学童期の保育サービスの不十分さ、とりわけ低年齢乳幼児の待機児童問題の深刻さ、さらには社会全体の子ども・子育て支援の不十分さを深く認識し、これらの課題を解決するために新たな子ども・子育て支援のシステムを構築する必要性が高まっていた。
このため、2010(平成22)年9月、政府は「子ども・子育て新システム検討会議」を立ち上げ、2012(平成24)年2月に「子ども・子育て新システムに関する基本とりまとめ」が公表された。これを受けて少子化社会対策会議において基本制度の骨格が固められ、これに基づき、同年3月末に「子ども・子育て支援法案」「総合こども園法案」「子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の3法案が国会に上程された。その後、当時の政局が絡み、「総合こども園法案」が廃止され、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案(いわゆる改正認定こども園法案)」が提出され、同年6月から8月にかけて衆議院、参議院で可決され、8月に子ども・子育て関連3法が公布された。その後、2013(平成25)年4月に子ども・子育て会議が設置され、現在2015(平成27)年4月からの施行に向けて、国及び地方公共団体がその体制を整備しつつある。
新制度の趣旨は、保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識のもと、幼児期の学校教育、乳幼児の保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進するというところにあり、保育、教育関係者に限らず国民、住民、社会すべてが子ども・子育てに深い関心を持ち、保護者とともに子育てに関わることが非常に重要となる。とりわけ、基礎自治体と呼ばれる市区町村が、新制度を支える実施主体としてきわめて大きな役割を果たすこととなる。
新制度は、消費税率の引き上げによる社会保障財源の確保が前提とされているが、本年4月からの税率8%への引き上げ、また来年度10月の10%への引き上げによって、約7000億円の追加財源が予定されている。また、新制度の骨格をなす保育サービスの量的拡大とともに保育の質の確保を図るためには、さらに3000億円の財源が必要であると言われている。

2.子ども・子育て支援新制度の仕組み
子ども・子育て関連3法の重要なポイントをまず上げてみよう。その第一は、乳幼児期における保育と教育のシステムとして「施設型給付」という仕組みが設けられたことである。これまで、幼稚園、保育所、認定こども園が全く別の制度や仕組みで行われていたものが、図1にみるとおり、幼保連携型認定こども園をはじめとする認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付の仕組みとなる。中でも、幼保連携型認定こども園は、当初は制度上新しく設けられるはずであった総合こども園に代わるものとして位置づけられるものとなり、今後「施設型給付」のなかでも特に注目されるシステムとなる。その第二は、乳幼児期における保育サービスの体系として、「施設型給付」に加え「地域型保育給付」という仕組みが設けられたことである。これまでの保育制度は、施設型集団保育を軸としてすすめられてきたが、図1にみるとおり、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育への給付によって、地域の様々な保育ニーズに対応する仕組みが広がることとなる。その第三は、基礎自治体それぞれの地域の実情に応じた様々な子ども・子育て支援をすすめるための「地域子ども・子育て支援事業」の仕組みが設けられたことである。具体的には、地域子育て支援拠点事業、一時預かり、病児・病後児保育事業、放課後児童クラブ等13の事業が対象となる。

図1.施設型給付地域型保育給付の仕組み(政府資料)




3.保育サービスの多様化
子ども・子育て支援新制度の最も大きな特色は、幼児期の学校教育、乳幼児の保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進するという趣旨に基づき、これまで非常に大きなウェイトを占めてきた施設型集団保育中心の体系に加え、きめ細かく柔軟に対応できるように多様な保育サービスのシステムを採り入れ、展開させるところにあると、筆者は受け止めている。
表1をご覧いただきたい。これは、保育が営まれる態様を示したものである。横軸は、家庭内保育と家庭外保育とに大別され、縦軸は、個別保育と集団保育に大別される。すると、四つの象限に分かれる。悠久の子育ての歴史上、保育の営みの源流にあたるものが、左上の象限つまり、子どもの生活の第一の基盤である家庭で保育を受ける居宅型保育、訪問保育である。その保育を担う者は、ベビーシッター、ナニーなどと称される。通常は、子どもの居宅つまりその家庭で大勢の子どもを保育する集団保育という態様はないので、家庭内保育は左上の象限のみが該当する。一方、子どもが家庭以外のところで保育を受ける態様は、二つに分けられる。右上の象限にあたるものが、家庭外でしかも個別的、家庭的環境で保育を受ける家庭的保育である。その保育を担う者は保育ママ、家庭的保育者などと称される。右下の象限にあたるものが、家庭外での施設型の集団保育である。 先に触れたように、わが国の保育制度はきわめて長年にわたり右下の象限に該当する施設型集団保育を基軸にしてすすめられてきた。乳幼児期の保育制度を担ってきた保育所及び幼児期の教育を担ってきた幼稚園、近年制度化された認定こども園、そしてその他の認可外保育施設がこれに該当する。その保育を担う者の多くは、保育士、幼稚園教諭など、制度上明確な資格や免状を有している保育者である。
さて、公布された子ども・子育て支援法で規定されている「施設型給付」は、この施設型集団保育の態様が該当する。これまで制度化されていた保育所、幼稚園、認定こども園に加え、事業として普及しつつあった事業所内保育所と、新たに事業化された小規模保育が含まれることとなった。新しく規定されたもう一つのタイプである「地域型保育給付」は、

表1.保育の態様

施設型集団保育の態様に属する小規模保育施設、事業所内保育施設が含まれるが、さらに個別保育に属する家庭的保育、居宅訪問型保育の態様が新たに規定された。尤も、家庭的保育事業は既に児童福祉法の改正により2010(平成22)年から制度化されてはいたが、この度の新制度に「地域型保育給付」の一つとして明確に位置づけられたこと、そしてこれまで全く制度化されることのなかった居宅訪問型保育が給付の一翼を担うこととなったことは、保育史上画期的なことと言える。

<以下、次号に続く>