解説レポート家族・親子関係の行方

更新日: 2002年1月1日

はじめに

21世紀へと歩み出した「子ども家庭福祉」だが、前途多難である。
長期化する経済不況、先が見えない政治、犯罪や不祥事の増加、そしてさまざまな影響が一層懸念される少子高齢化といった状況によって、子どもと家族は将来に対して夢や希望を持てなくなっている。
こうした状況への対応と社会福祉基礎構造改革が進む中で、1994年に始まった「エンゼルプラン」は新たなフェーズに入っている。1997年に一部改正された児童福祉法も更なる改正の時期を迎えている。そして1998年の「少子化への対応を考える有識者会議」から「家庭に夢を分科会報告書」「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために(提言)」など、今日に至るまで「家庭、地域、教育の在り方」や「働き方」に関するかずかずの提言は、各方面で取り組みが少しずつ進みつつある。にもかかわらず、依然として夢や希望を持ちにくい状況にそれほど大きな変化はない。こうした中で、家族や親子関係に深く関わる重大かつ不幸な事件が次々と起こっている。中でも子ども虐待は、家庭という本来子どもの成長を育む環境であるはずの場で、子どもの命を奪いさったり、身体と心に癒しきれない深い傷を残すもので、重大な社会的問題となっている。新しい時代の家族と親子の関係はどのようになっていくのかが懸念されところである。
 本稿では、こうした家族と親子の関係について7つの観点から考えるとともに、「新しい子ども家庭福祉」に対する筆者のメッセージも盛り込みたい。

1. 家族と子育て機能

近年、社会経済的な環境の大きな変化の中で、家族はさらに多くの機能を家庭外の制度に譲り渡し、地域の資源に頼ることとなった。留まることのない核家族化の進行(注1)にともない家庭内の子育て資源は枯渇し、もっとも家族らしい働きとしての「子どもを育てる機能」が、もはや社会的な支援なくしては成り立たなくなっている。

 子育て機能は、1)清潔で束縛の少ない環境を整えることによって子どもの心身の健康を維持し、2)刺激豊かな環境を用意することによって子どもの情操および知的成長を促し、さらに、3)社会化(socialization)のプロセスによって社会での人間関係の中で社会人としての役割を果たし、自らの価値を実現しつつ自立した生活をおくるための基本的な知識、技術そして「こころ」を育むということであろう。  こうした複雑な子育て機能は、家庭の内外にある多くの資源を活用してその役目を果たしてきたが、家庭内の資源が失われるにつれ、家庭外資源への依存の比率が増してきている。ことに男女共同参画を強調する社会では、子育てはもはや社会的な援助なくしては機能しなくなっていると言える。
 しかし、ここで議論となるのは、家族が子育ての機能を他に譲り渡してしまうのをくい止めるかどうかの問題ではない。むしろ、地域に子育てを支援するさまざま資源を用意し、親が子育ての質を高め、次世代を担う人材を育むことに喜びや夢を持てるかどうかである。すなわち、公私のきめ細かいレスピット(respite)資源を総合的・計画的に地域の中に用意するということは、社会的連帯により家族が夢と喜び感じ「楽しめる」子育ての働きを支援するということなのである。

2. 家族(ファミリー)と親子関係の捉え方

すでに「家族」ということばを使用しているが、ここで家族あるいはファミリーの捉え方について少し考えてみたい。核家族化というときは、親、祖父母、子といった三世代以上の構成員からなる家族すなわち多世代家族あるいは拡大家族と対比して論じられる。今日主流の核家族は親と子という二世代家族であり、もっとも単純な家族構成であるだけに、多世代家族などに比べて家庭内の資源が乏しい。ことに子育てや介護に関わる家庭内資源の乏しさが懸念されており、そうした乏しい資源の中での親子関係なのである。
今日私たちが「家族」という場合には、こうした二世代家族をイメージすることが多い。しかし、それだけでは不十分なのである。未婚率や離婚率の増加に伴い、こうした二世代家族以外に、ひとり親家庭といったインタクトではない二世代家族はもちろんのこと、これまでの婚姻制度に基づかない新しい形の二世代家族も考慮する必要がある。
 Pecora, P. J.ら(1994)は、Nunnally, E. W.ら(1988)の定義を引用し、これまでの法的な見方を離れ、伝統的な血縁や結婚、養子縁組に基づくファミリー(家族)だけではなく、「ファミリーとしてのアイデンティティを感じ、コミットした関係にある2人以上の人[の集まり]」(p.11)をファミリーとして捉えている。そして、結婚していない親と子、血縁のない保護者と子、未婚のひとり親と子どもといった人びとが家族としてコミットしている(アイデンティティを感じている)場合などもファミリーとし、ファミリー(家族)中心児童福祉(family-centered child welfare)の理論と実践を展開している。
 本稿では、家族とは、子どもとすべての家族員(必ずしも血縁や婚姻関係がある必要はない(注2))にとって、互いに援助し合う中で成長し、自己実現するために必要なもっとも身近で安定した環境、すなわち「育む(nurturing)環境」であると考える。この育む環境における親子関係には、極端な例ではあるが子どもの虐待や家庭内暴力のように、家族員が他の家族員を強制的に従わせる関係(coercive relationship=強圧的関係)ではなく、互いが互いの良さを認め、育て合う関係(mutual reinforcing relationship=相互強化的関係)が求められる(Patterson, G. R.、1982)。こうした視点で見ると、今日社会的な問題として関心を集めている、家族に関わる憂うべき諸々の現象は、家族の「育む」特性とは相反するものであり、新しい子ども家庭福祉を目指す社会への挑戦であると考えねばならない。

3. 危機的な二世代家族

家族は、子どもにとって、そして他の家族員(親や保護者、家族としてコミットする大人)にとっても成長・発達のための重要な環境である。後述するように、こうした家族における子育ては、「相互強化的関係」の中で子どもの「育ち」を支援することであり、それを行うことが「ペアレンティング(parenting:親あるいは保護者としての役割を果たすこと)」である。すべての子どもは、心身の障害の有無にかかわらず、生まれながらにして個性的な存在として独自の成長をする力を備え、日々「成長する」という課題を遂行していると考えられる。そうした子どもに対して、親がその子なり(独自)の「育ち」を支援することがペアレンティングなのである。実は、このペアレンティングを遂行することは親として成長することであり、親としての成長課題を遂行することになる。すなわち、子どもの育ちを支援すること、すなわち「子育ち支援」としてのペアレンティングが親としての育ち、すなわち「親育ち」であり、社会がこの「親育ち」を支援することが「子育て支援」の本質であると言わねばならない。
 Pecoraら(1994)は、「親育ち」としてのペアレンティングが社会・経済・文化といった環境の影響や個人的特性を反映した働きであることを指摘し、ペアレンティングを家族中心児童福祉実践の核として位置づけている。そして、このペアレンティングが親子関係そのものであり、子どもの健全な成長を育むべきものであるが、場合によっては損なうこともある、としているのである。
 こうしたペアレンティングを支援するためには、公私の多様な資源が地域において開発・提供されなければならない。しかし、親は、そうした資源についての情報を吟味し、資源を選択、活用しながら子育ち支援すなわちペアレンティングを実現していくという課題を負っているのである。親と子どもの組み合わせを単位とする二世代家族(注3)はこうしたペアレンティングを実現する最少の単位であるが、子どもを巻き込んだ悲惨な事件が毎日のように報道される現状を見ると、今まさにこの二世代家族が危機にさらされていると言わざるを得ない。二世代家族の「自前」の資源では、ペアレンティングを十分機能させることができないのである。二世代家族が”滅び行く”のを手をこまねいて見ているわけには行かない。ペアレンティングを支援する多様な資源の整備・開発、資源に関する入手しやすく理解しやすい情報の提供、そして資源の選択と活用を援助するマネジメントの仕組みを地域に構築することが求められている。

4. 家族の生活と親子関係を捉える視点

ここで少し家族と親子関係を捉える視点を整理しておきたい。
 先に触れた家族中心児童福祉がよって立つ4つの視点は、日本の家族の生活を包括的に捉え、援助する場合にも有効な視点であり、これからの家族と親子関係を占う上でも重要な視点となると思われる(Pecoraら、1994、pp.35-57)。日本の子ども家庭福祉のバックボーンとなるべき視点であるが、残念ながら、日本の児童福祉法の中には明確に示されてはいないものである。

1)人と環境を一体として(ゲシュタルト)として捉える視点。
統合的な視点に立つと、育む環境としての家族や地域と子どもの成長との密接な関係がより一層明瞭となる。両者を切り離して考え、援助することは不可能であり、家族や地域との関係を十分に把握した上で、子どもの福祉あるいは幸せ(ウェルビーイング)の実現を援助しなければならない。この視点は、今日では日本の社会福祉においても十分認識されており、児童福祉から子ども家庭福祉へのシフトからも見て取ることができる。

2)「成長」の視点。
子どもや家族が抱える問題を「問題」として捉えるのではなく、「成長」のプロセスとして捉え、子どもと家族の良さ、力(strengths)、あるいはアセット(assets)に着目し、それらを育み伸ばす援助を試みることが重要であるという視点である。

3)人の問題解決能力(コンピテンス:competence)を高める視点。
2)と関連するが、人の問題解決の能力は、その人の力でありアセットである。そうした力は、社会的環境(その人が関わりを持つ人びと)からの期待とその人の持つ適応能力(期待に応える力)との交互作用の結果として生み出され、高められる。子どもと家族の持つ力やアセットに焦点を定め、より優れた問題解決の知識や技術を身につけるよう子どもや家族を援助をすることによって、子どもや家族がともに「やればできる」という感覚を育めるように援助しようとする視点である。

4)子どもの成長にとって必要な環境を長期的な視点で見ること。
子どもには、安全で安定した継続的な成長の環境を与えられる権利があり、社会にはそれを用意する義務がある。子どもの最善の利益を護るということは、こうした継続的で安定した環境、すなわち「パーマネントな」親(必ずしも実の親である必要はなく、心理的に安定した信頼関係の持てる保護者の意:Goldstein, J.ら、1979)を、子どもが必要とするときに迅速に用意することである。

この4つの視点は、アメリカの児童福祉や児童虐待に対応する法律のバックボーンとなっているが、残念ながら日本の児童福祉法や新たにできた児童虐待防止法にも、はっきりとした形では示されていない。

5. アメリカ児童福祉が護ろうとしているもの

アメリカの児童福祉は、こうした4つの視点を持つことによって子どもと家族の何を護ろうとしているのであろうか。
Schuerman, J. R.ら(1995)は、このような視点を持つ児童福祉関連法に共通して見られる原則を3つにまとめている。そして、その3つの原則は、子どものウェルビーイングのみではなく、子どもにとってもっとも重要な成長環境としてのファミリー(家族)を護る(preserve)ためのものであるとしている。これらの原則は、子どもの虐待に対する対応に関わる苦い経験の中から出てきており(注4) 、古くは1980年の「養子縁組援助および児童福祉法(Adoption Assistance and Child Welfare Act of 1980, PL 96-272)」に、そして新しくは「養子縁組および安全家族法(Adoption and Safe Families Act of 1997, PL 105-89)」に反映されている。

3つの原則は;
1)リースト・リストリクティブ処遇(least restrictive alternatives)の原則:社会は、子どもが拘束のもっとも少ない環境において成長できるように保障しなければならないという原則である。この原則に従うと、家庭において家族と一緒に生活することがもっとも拘束の少ない環境であり、養子縁組が次善の環境、そして里親や施設はもっとも拘束が大きい環境ということになる。

2)リーゾナブル・エフォーツ(reasonable efforts)の原則:3つの原則の中ではもっとも解釈が難しい原則であるが、基本的には、社会は子どもが家族と一緒に暮らせるように(family preservation)”最大”の努力をしなければならないというものである。しかし、「リーゾナブル」ということばを、「最大」とはせず、「適当な」と解釈して、十分な努力を怠る場合も多いことが問題となっている。1997年の新法では、理由が明確であれば、家族を維持するためのリーゾナブル・エフォーツを行わずに、直ちに親権を停止し、養子縁組をすべきであるということになったが、安定した成長環境を保障するためのリーゾナブル・エフォーツという意味では変化はない。

3)パーマネンシー・プランニング(permanency planning)の原則:これについては、家族中心児童福祉の4番目の視点としてすでに少し触れた。パーマネンシー・プランニングはそれをより具体的にした原則である。子どもにとって安定した保護者との長期的な関係を具体的に保障できるように計画しなければならないという原則である。かつては、家族の維持→養子縁組→長期里親あるいは施設→自立(emancipation、年長児の場合)という明確な順序があったが、1997年の新法から、子どもの個別のニーズによってこうしたオプションの中からもっとも相応しい処遇を選択することになっている。

こうした3つの原則と先に述べた4つの視点を通して、アメリカの児童福祉は、子どもの成長にとってもっとも重要な環境、すなわちファミリー(家族)を護ろうとしているのである。そして、このファミリー(家族)とは必ずしも血縁による狭義の親子ではないことは冒頭に述べたとおりである。

6. パーマネントな成長環境としての親子関係:自信を持てる親と自分を見いだせる子どもとの関係

アメリカの家族中心児童福祉(family-centered child welfare)のバックボーン、そして1980年から97年の間に施行された児童福祉に関わる諸法のバックボーンは日本の児童福祉法や児童虐待防止法には見あたらない。しかし、子どものウェルビーイングの実現は親のウェルビーイングそして家族のウェルビーイングの実現を通して考えなければならないとする「子ども家庭福祉」が日本でも根付き始めた。2000年には「日本子ども家庭福祉学会」が発足し、最初の全国大会が開催された。こうした望ましい変化が見られる中で、少しずつ「バックボーン」が実践の理論として、またより具体的な実践のモデルとしても育ちつつある。
 今後こうした流れの中で、新しい子ども家庭福祉を考えるために必要な点について考えてみたい。子育てと仕事の両立は、単に不足する労働力を補う社会的な生産力の強化という視点だけではない。一人の自立した人としての女性が自己実現し、自立した男性とともに、次世代を担う子どもの成長を支援することを意味している。子育てと仕事の両立は「子育ち」と「親育ち」を促進する親子関係を支える必要条件であり、そのような子育てと仕事の両立が可能なシステムを築き上げねばならない。広義の二世代家族を支える資源は、子育ち支援(ペアレンティング)を肩代わりするものではなく、それが効果的効率的に行われることを保障するものでなければならないのである。
 親は、周りの期待に応えペアレンティングの能力を高めることによって成長し、家庭の中に居場所(ニッチ、niche(注5))を見出し、親としてのコンピテンスを育むことになる。
子どもは、こうした親のペアレンティングによって子育ちを実現し、ニッチとコンピテンスを育む。これは互いのよいところを認め育て合う相互強化的(mutually reinforcing)関係であり、そのような関係の中で、親は子育てに自信と夢を持ち、子どもはしっかりとした自分(アイデンティティ)を持つことができるのである。
 Patterson. G.R.(1982)は、一方が他方を強制的に従わせる強圧的な(coercive)関係は、親子の関係としては望ましくないとした。彼は、オペラント行動理論の立場から、強圧的な関係の仕組みを次のように分析している。親が子どもに対して強圧的な手段を用いて行動を促したり、制止したりすることが成功した(子どもが親の促しあるいは制止に従った)場合、親の強圧的な行動は正の強化(positive reinforcement)の原則 (注6)に従って増加する。一方、これを子どもの側から見ると、子どもが親の強圧的な指示に従った場合、結果として親の強圧的で不快な行動がストップすることになり、負の強化(negative reinforcement)の原則(注7) に従って、親の強圧的指示に従うという行動が増加することになる。こうした正の強化と負の強化の組合せによる強圧的関係は、暴君と虐げられる民との関係に似ている。これは安定した関係でなかなか崩れにくい。しかし、長期化すると、暴君(親)の強制に従っていた民(子ども)がたまりかねて反乱を起こすことになる。そして、暴君(親)と同じ強圧的な手段を用いて暴君(親)を従わせようとするのである。
両者の立場は180度変わることになるが、強圧的な関係はそのまま維持されることになる。
 実は子ども虐待は、このような強圧的関係に支えられており、それは次の世代へと受け継がれ、世代を越えて虐待が繰り返されるという危険をはらんでいる。このような関係は決して親と子が互いの成長を育む関係ではない。相互強化的な関係は、正の強化の組み合わせによって支えられた関係である。
 Pattersonの分析によると、親が子どもの好ましい行動に関心を持ち、それを褒めることによって、子どもの好ましい行動が正の強化を受ける。子どもも親のそうした行動に適切に反応することになり、それが親の行動を強化する。こうした相互強化の関係では、子どもも親も、行動を強制されているとは微塵も感じない。自らの意思で行動し、その結果として周りから評価されると感じることによってコンピテンスが育まれることになる。
 相互強化の関係では、親と子の関係はもはや親が主で子どもが従という関係ではない。同じ目線で互いにその良さを認め合う関係の中で、親は子どもの育ちを、そして子どもは親の育ちを援助することになるのである。こうした相互強化的関係を支える仕組みを社会の中に作ることが、子ども家庭福祉の課題となる。

7. 子育ち支援としての親育ちを学ぶ環境:神戸市の取り組み

子どもの重要な環境としての家族、そして、子どものニッチとピテンスを育む親子の相互強化的関係の中で、子育ちを支援する親は子どもの成長を楽しみ、自らの成長を楽しみながら、親としての育ちを実現することができる。
 しかし、現実を見ると、「島化した(insular)」二世代家族には、こうした「親育ち」の模範(モデル)が身近になく、「親育ち」そのものを放棄することになりかねない。したがって、ペアレンティングを高めるような資源を地域の中にきちんと用意する必要がある。すなわち、「親育ち」のプロセスに適ったペアレント・トレーニングのプログラムを計画的に開発し普及・整備(dissemination)する必要がある。
 神戸市総合児童センターでは、児童相談所および大学(注8) との連携によって「子育ち支援、親育ち支援」のプログラムを研究開発(R&D)してきたが、平成11年度より市内の全児童館(105館)に普及・実施している。その中身について詳しく触れる紙面の余裕はないので詳しくはセンター機関誌「育ちゆくこども―予防・指導の実践と研究1〜5―」(神戸市総合児童センター、1989、1992、1994、1996、近刊)に譲るが、ここでは重要な特徴について紹介しておきたい。
 まず、この講座は、先に触れたように、互いの良さを認め成長を支え合う親子関係(mutually reinforcing relationship)を育む援助を目的としている。そして、そのための知識と技術((1)コンサルタン=良さを伸ばす役割、(2)リミットセッター=限度を理解させる役割、(3)アーキテクト=良さを伸ばす環境づくりの役割 (注9))を講話やロールプレイおよびグループワークのプロセスを通して身につけることができるようになっている。同時に講座では、親どうしの横のつながりを育むことと息抜きの機会を持つことによって、子育て、すなわち「子育ち支援(ペアレンティング)」にゆとりと楽しみを持てるように配慮されている。
 このプログラムの今一つの大きな特徴は、開発当初より児童館や地域子育て支援センターなどへのプログラムの普及を念頭に置いて、系統立った研究開発を行ってきた点である。そして、プログラムをできる限り広く普及するために、採用現場の資源や人材など個別の状況に合わせて柔軟に対応できるようなプログラム実施マニュアルの開発を平行して行った。さらに、現場でのワークショップを兼ねた出張講座を継続的に実施してきたのである。

おわりに

子ども家庭福祉は、子どもの虐待など多くの深刻な課題を積み残したまま21世紀への前途多難な船出をしたが、子どもと親がともに成長し合える場と資源を用意することは、社会の責任であり、子ども家庭福祉の責任である。言い換えれば、子ども家庭福祉のアカウンタビリティが問われているのである。系統だった「親育ち支援」の資源開発と普及を地道に続けて行かねばならない。

文献
Germain, C. B. & Gitterman, A. (1996) The Life Model of Social Work Practice: Advances in Theory and Practice (Second Edition). NY: Columbia University Press.

Goldstein, J., Freud, A. & Solnit, A. J. (1979) Before the Best Interests of the Child. NY: Free Press.

Nunnally, E. W., Chilman, C. S. & Cox, F. M. (Eds.) (1988) Troubled Relationship: Families in Trouble Series (Vol.3). CA: Sage.

Patterson, G. R. (1982) Coercive Family Process. NY: Castalia Publishing Co.

Pecora, P. J., Whittaker, J. K. & Maluccio, A. M. (Eds.) (1992) The Child Welfare Challenge: Policy, Practice, and Research, NY: Aldline de Gruyter.

芝野松次郎編(1989,1993,1995,1998)「よりよい親子関係の援助法」『育ちゆくこども―予防・指導の実践と研究1〜4―』神戸市総合児童センター

芝野松次郎著(2001)「「親と子のふれあい講座」の研究開発:最終段階」『育ちゆくこども―予防・指導の実践と研究5―』神戸市総合児童センター

Schuerman, J. R., Rzepnicki, T. L. & Little, J. H. (1995) Putting Family First: An Experiment in Family Preservation. NY: Aldine De Gruyter.

White, B. L. (1985) The First Three Years of Life. NY: Prentice Hall.

<注>

注1)2000年国税調査の速報によると、世帯数が増加する一方で世帯あたりの人数は2.70人と過去最低を記録している。

注2)以後、「親」と表記の場合は、血縁のある親や未成年後見人ではなくとも、家族としてのアイデンティティを持ち、監護の責任のある「保護者」も含む。したがって「親」は「親(保護者)」、「親子」は「親(保護者)子」、「親育ち」は「親(保護者)」などと読み替えていただきたい。

注3)前述したように、二世代家族を広く定義して使用しており、「親」には保護者が含まれる。

注4)子どもの救命を最優先した対応が、尚早に子どもを家族から引き離すこととなったために、結果として子どもの安定した成長環境が奪われ、いわゆる「リンボー現象」(里親や施設をたらい回しにされること)を引き起こすこととなり、かえって子どもの最前の利益を護れなかったという経験。

注5)ニッチは、生態学では特定の生物が特定の環境の中で占める「地位」のことであるが、ソーシャルワークでは、特定の状況の中で特定の人に対する社会的な(周りの人からの)期待とその人の能力とが一致したところに生まれる機能的な居場所と考えられている(Germain, C. B. & Gitterman, A.、1996などを参照)。

注6)オペラント行動理論における「正の強化」とは、行動の結果として生じる事象が、将来同じような状況でその行動が生じる確率を高めることを意味している。子どもがお皿洗いを手伝ったときに母親が子どもを褒めるということがその子の皿洗い行動の頻度を高めた場合、子どもの皿洗いは母親が褒めるという結果事象によって強化されたことになる。この場合の母親の褒めことばは強化因子と呼ばれる。

注7)「負の強化」とは、行動の結果としてそれまであった不快なものがなくなると、将来同じような状況でその行動の生じる確率が高くなることである。ガミガミ言う親に従って勉強をする振りをすると、親のガミガミがなくなる。この場合、勉強の振りとい行動の結果として不快なものが取り除かれたことになり、子どもは勉強の振りをすることが多くなる。負の強化が生じたことになる。

注8)神戸母子交流研究会(関西学院大学社会学部内に設置、代表芝野松次郎)と開発契約を結んでいる。

注9)パターソン(Patterson, G.R.、1982)やホワイト(White, B. L.、1985)などを参照のこと。

(しばの・まつじろう)

*子ども家庭福祉情報 第16号(2000年12月)特集:「新しい子ども家庭福祉~21世紀への展望」より一部改変