子どもの事故子どもの安全をめぐって―「学校安全の推進に関する計画」とは?

更新日: 2013年5月31日

1.はじめに

私は小児科医としての経験を積んだ上で、これまでに母子保健、学校保健、健康教育等の領域で教育や研究に携わって来ました。平成17年から中央教育審議会(以下、中教審)委員を務め、教育にかかわる様々な新たな動きや取り組みにつながる論議に加わって来ました。本稿では、平成23年から24年にかけて「学校安全の推進に関する計画」について中教審において審議し、答申としてまとめた内容をご紹介したいと思います。保育所で日々を過ごす子どもたちにとって安全は片時もおろそかに出来ぬ重要な課題です。生活する上での安全はどのような考え方や理論に基づき、どのように実践し、配慮すべきことなのか、単に「気をつける」以上の内容が求められるのではないかと感じています。世界的に広まりを見せているセーフティプロモーションという学問領域を基礎に、けがや事故などの意図しない傷害の予防、暴力あるいは自傷行為等の意図的な傷害の予防の双方を含めた「傷害予防(injury prevention)」が具体的実践の対象領域となります。このような理論も意識しつつ、「学校安全の推進に関する計画」について解説してみたいと思います。保育所における安全を考える上での参考として読んでいただければ幸いです。

2.中教審における「学校安全の推進に関する計画」の審議

平成21年4月に施行された学校保健安全法では、学校における保健管理と安全管理に関し必要な事項を定めています。この中で学校安全については、「国は、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に推進するため、学校安全の推進に関する計画を策定する」と定めています。この計画は、政府と地方公共団体が相互に連携を図り、各学校において安全に係る取組が確実かつ効果的に実施されるようにするための重要な指針となるものです。このことを基本とし、平成23年9月22日、中川正春文部科学大臣(当時)より「学校安全の推進に関する計画の策定について」と題する諮問が中教審に対しなされました。この中で東日本大震災の経験を踏まえ、児童生徒等の危険予測・危険回避能力を高めること、防犯を含めた生活安全、交通安全の領域に関する安全教育の具体的な方策、教職員の研修などの人材養成、学校安全に関する専門的知見の活用、外部人材や地域との連携促進による学校安全の充実、学校安全に関する科学技術の活用等、安全管理や組織活動の面から取り組む体制を整えるための具体的な方策等に留意して議論することが求められました。

諮問を受けて、中教審では具体的審議をスポーツ・青少年分科会に付託し、同分科会では 学校安全部会を設置し、12月6日より翌2012年3月13日まで計9回の審議を行い、答申(案)をまとめた。この案は最終的に分科会、総会での審議を経て3月21日の総会にて平野博文文部科学大臣(当時)に手交されました。その内容については文部科学省ホームページより確認出来ます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1318910.htm

3.「学校安全の推進に関する計画」の閣議決定―答申を受けて

答申を受けて、文部科学省では、学校保健安全法に基づき、平成24年4月、「学校安全の推進に関する計画」を閣議決定を経て策定しました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1320286.htm

その内容は答申と同じく、児童生徒等の安全を取り巻く現状と課題についての現状認識を示した後、学校安全を推進するための方策として、①安全に関する教育の充実方策、②学校の施設及び設備の整備充実、③学校における安全に関する組織的取組の推進、④地域社会、家庭との連携を図った学校安全の推進の4本の柱が示され、それらを平成24年度からの5年間で取り組む具体的施策として提示しました。そして、それらの方策が効果的に推進されるために必要な事項として、政府における推進体制の整備と地方公共団体における推進体制の整備が必要であるとしています。本計画は学校の保健と安全についての管理について定めた学校保健安全法に基づいたものですが、生活安全、交通安全に加え、東日本大震災を受けて災害安全についても特に配慮していること、学校における安全管理に加え、安全教育についても多くのページを割いていること等の特徴を有しているといえます。

おわりに

学校における集子どもの安全をどう確保するかについて、政府として具体的提案がなされた訳ですので、これがどう実行され、どのような成果をあげるのか、国民としてはしっかりと見ておく必要があると同時に、それぞれの場において積極的にかかわっていただくことが期待されます。保育所における安全の推進という点からもセーフティプロモーションに則った考え方を大いに参考としていただければ幸いです。

※「保育界」第465号(2013.5)からの転載