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文献抄録特別な配慮を必要とする幼児の教育的支援  -感情の起伏が激しく気持ちのコントロールがしにくい幼児を支える集団づくりの実践を通して

更新日: 2011年6月1日

著者 竹内範子、玉村公二彦、越野和之(奈良教育大学附属幼稚園、奈良教育大学)
掲載誌 教育実践総合センター研究紀要、18号、157~163頁、2009

保育や幼児教育の現場においては、発達障碍の疑いや虐待的養育環境などにより、「気になる子ども」への適切な支援や教育の方法を確立することが、喫緊の課題となっている。

紹介する研究論文では、5歳男児の事例に基づき、幼稚園全体での1年間にわたる具体的な取り組みが記述されている。
A児には、
① 感情のコントロールがうまくできず、友だちとトラブルになったり、集団活動に参加できない、
② 幼稚園(落ち着かない)と家族の前(いい子)とでは姿がまったく違う、
という特徴がみられた。

そこで、一学期終了後の園全体のカンファレンスに基づき、
① 受容的なクラス作りによるA児の居場所の確保、
② 保護者との共通認識の形成
という、二学期からの方針が定められた。

紹介論文では、暴れたり泣きわめいたり、集団活動になじめないA児の思いを、当該の活動がうまくできないときに感じる強い不全感や、自分に自信がもてず不安になってしまうありようとして捉えている。また、自己評価の低いA児にとって、保育者から叱られることは、自分のことを拒絶されたという思いにつながる、と捉えている。
そうした理解のもと、
① みんながいる場で暴れたり泣きわめいたりするとき、
② みんなと一緒に活動ができないとき、
③ 「できる・できない」から、中間項をもった多面的・多価的評価へ、
④ みんながいる場に入りやすくするために、
⑤ 特別な約束をつくる、
⑥ 保護者との共通認識の形成、
といった具体的な場面に即した働きかけを記述している。

例えば、「みんながいる場で暴れたり泣きわめいたりするとき」には、不全感・不安感・自己否定感の強いA児が、活動を投げ出してしまう前に、自己評価を高める声かけを行なったり、パニック状態になった場合の逃げ場所として、保健室を準備するなどの工夫が記述されている。

こうした取り組みの結果、三学期になると、A児は、友だちとのトラブルも激減し、集団活動に自分なりに参加できるようになった。また、両親が受容的に関わるようになり、園と家庭との姿のギャップも少しずつ埋まってきたという。園全体での具体的な取り組みが記述されている本論文は、現場の保育者にとって、貴重な資料になると考えられる。