文献抄録第4回幼児健康度調査について 食生活

更新日: 2013年10月15日

著者 堤ちはる(日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部)
掲載誌 保健の科学、第55巻第8号、528-534、2013年

子どもにとって食事は健全な心とからだの発育・発達に影響し、味覚や食嗜好の基盤となる。また、食生活の営みにより人間関係が構築され、豊かな心も育まれる。そこで、生涯にわたる健康の維持・増進という長期的な視点からの栄養管理が必要であり、子どもには適切な食事を好ましい環境のもとに提供することが極めて重要である。紹介する論文は、食生活を通じた子育て支援に寄与する知見を得ることを目的に、1980年(昭和55年)から2010年(平成22年)までに10年毎に実施された幼児健康度調査結果から、子どもの食生活の経年変化や近年の状況の一端を明らかにしたものである。

【食事についての心配事】
食事についての心配事の有無を年齢別にみると、心配事があるのは、1歳児48.7%、1歳6か月児54.5%、2歳児52.5%.3歳児56.7%、4歳児49.6%、5歳児41.0%と年齢にかかわらず、約半数にみられた。食事の心配事と育児の自信の関係をみると、「食事の心配事があり」では、「育児に自信がもてないことがあり」は30.3%であったが、「食事の心配事がなし」では、その割合は15.6%であった(図1)。

また、食事の心配事と子育ての困難感の関係は、「食事の心配事があり」では、「子育ての困難感があり」は33.1%であったが、「食事の心配事がなし」では、その割合は約6割の19.0%であった。食事の心配事の有無と育児の自信の有無、子育ての困難間の有無との間には、統計的に有意な関連が示された。
食事の心配事の内容の経年変化をみると、1980年から2010年までいずれの年も第1位は「落ち着いて食べない」であり、27.1%→26.5%→29.4%→23.7%と推移していた。しかし、この訴えを年齢別にみると1歳児25.6%、1歳6か月児29.0%、2歳児28.7%、3歳児27.9%であったものが、4歳児になると17.1%、5-6歳児では13.0%と年齢が高くなると減少し、かなり落ち着いてくる。
「好き嫌いが多い」悩みの1980年から2010年の経年変化は、14.0%→16.2%→16.7%→18.6%と推移していた。好き嫌いの悩みを年齢別にみると、1歳児8.3%、1歳6か月児16.9%、2歳児21.6%、3歳児28.4%、4歳児24.8%、5-6歳児18.3%と、3歳で最大になり、以降は減少していた。
少食は年齢に関わりなく、9~11%にみられた。また、今回より新たに加えられた項目である「食べすぎる」は、1歳児7.3%、1歳6か月児5.9%、2歳児4.7%、3歳児3.2%、4歳児2.5%、5-6歳児2.1%と年齢が進むとともに減少傾向にあった。どの年齢でも「食べ過ぎる」よりも「少食である」ことを心配する保護者が多かった。
「よく噛まない」は、1歳児14.6%、1歳6か月児15.1%、2歳児9.6%、3歳児6.7%、4歳児4.6%、5-6歳児で3.0%と、こちらも年齢が進むととともに割合が減少していた。低年齢で「よく噛まない」が多いのは、乳歯の萌出状況に合わせた食べ物を与えていないために、“よく噛めない”状況を「よく噛まない」と判断している可能性も推察される。

【朝食のとり方】
朝食を「毎日食べる」子どもは、2000年の87.3%から、2010年には93.3%に増加した。これは食育の一環として取り組まれている「早寝・早起き・朝ごはん」運動の効果が現れた結果と思われる。
朝食の摂取と食事の心配事の有無の関係をみると、「朝食を毎日とる」と「食事について心配なことがあり」は49.5%であるが、「朝食を毎日とらない」とその割合は66.0%に増加した。また、朝食の摂取と偏食・少食・食べ過ぎなどの悩みの有無の関係をみると、「朝食を毎日とる」と偏食・少食・食べ過ぎなどで困っていることが「あり」は39.7%であるが、「朝食を毎日とらない」とその割合は約1.5倍の61.2%に増加した(図2)。

さらに、朝食の摂取と子育て困難感の関係をみると、「朝食を毎日とる」と子育てに困難を感じることが「あり」は25.8%であるが、「朝食を毎日とらない」とその割合は31.2%に増加した。
朝食の摂取と食事の心配事の有無、偏食・少食・食べ過ぎなどの悩みの有無、子育て困難感の有無には、統計的に有意な関連が示された。
朝食の摂取状況と生活リズムに大きな影響を与える起床時刻との関係をみると、朝食を「毎日とる」子どもは、起床時刻が「6時台以前」は29.3%、「7時台」は55.3%、「8時以降」は15.4%であり、7時台までに8割以上が起床していた。一方、朝食を「毎日とらない」子どもは、起床時刻が「6時台以前」は12.2%、「7時台」は41.6%、「8時以降」は46.2%で、7時台までに起床していたのは約5割と少なく、起床時刻が遅い群で朝食の摂取割合が低かった。
朝食の摂取状況と就寝時刻との関係については、朝食を「毎日とる」子どもは、就寝時刻が「20時台以前」は17.5%、「21時台」は53.7%、「22時以降」は28.8%であり、22時までに約7割が就寝していた。一方、朝食を「毎日とらない」子どもは、就寝時刻が「20時台以前」は3.6%、「21時台」は27.7%、「22時以降」は68.7%で、22時までに就寝していたのは約3割と大変少なく、就寝時刻が遅い群で、朝食の摂取割合が低かった。朝食を「毎日とる」と起床時刻、就寝時刻の間には、統計的に有意な関連が示された。 食事の心配事の有無と就寝時刻の関係をみると、食事について心配なこと「あり」の群は、就寝時刻が「21時以前」は65.8%であるのに対して、心配なこと「なし」の群は、72.1%であり、食事について心配なこと「なし」の群で就寝時刻が早かった。偏食・少食・食べ過ぎなどの悩みと就寝時刻の関係をみると、偏食・少食・食べ過ぎなどで困っていること「あり」の群は、就寝時刻が「21時以前」は64.1%であるのに対して、困っていること「なし」の群は71.7%であり、困っていること「なし」の群で就寝時刻が早かった。就寝時刻と食事の心配事の有無、偏食・少食・食べ過ぎなどの悩みの有無の間には、統計的に有意な関連が示された。

【おやつの与え方】 おやつの与え方の1980年から2010年までの経年変化で、「特に気をつけていない」は、31.2%→28.4%→24.3%→22.3%と減少傾向にあった。子どものおやつは大人とは異なり、胃の容量が小さいために3度の食事の補いの役割もある。そこで、与える量、時間、品質などに十分な配慮が求められることから、おやつを与えるときに「特に気をつけていない」保護者への食育が必要である。
「時間を決めて」与える者は、31.2%→38.5%→40.0%→50.0%と増加傾向にあった。「欲しがるときに」は、17.7%→21.2%→22.9%→23.0%とあまり変化はなかった。「栄養価に注意する」は、12.2%→9.8%→8.7%→12.9%と2000年値より2010年は増加していた。「甘いものは少なく」は36.0%→26.7%→16.3%→19.5%と1990年に比べて2000年、2010年は減少していた。「甘いものに偏る」は4.5%→3.1%→9.0%→12.7%と増加傾向を示していた。「スナック菓子」は、2000年の10.0%が2010年は13.1%に増加した。以前に比べて、「甘いものは少なく」が減少し、「甘いものに偏る」や「スナック菓子」が増加しており、このような保護者の姿勢は保健指導、栄養指導の際に留意したい。 年齢別にみると、「特に気をつけていない」は、1歳児24.9%、1歳6か月児18.2%、2歳児23.6%、3歳児19.9%、4歳児20.5%であるが、5-6歳児になると26.0%に増加し、年齢が進むとおやつへの配慮は少なくなっている。「時間を決めて」と回答したものは、1歳児45.5%、1歳6か月児51.5%、2歳児45.5%であるが、3、4、5-6歳児は、それぞれ53.5%、52.7%、53.0%と増加した。一方、「欲しがるときに」は、1歳児21.9%、1歳6か月児27.2%、2歳児28.2%であるが、3、4歳児はそれぞれ22.5%、22.3%、5-6歳児は15.8%と減少傾向を示した(表3)。3歳以降に「時間を決めて」が増加し、「欲しがるときに」は減少するのは、幼稚園や保育所などで集団生活をする子どもが増加するためと考えられる。 「栄養価に注意する」をみると1歳児20.8%、1歳6か月児16.6%、2歳児11.5%、3歳児9.1%、4歳児7.6%、5-6歳児7.4%と年齢が進むとともに減少しており、これは、子どもは成長と共に好みのおやつを主張するようになり、保護者は子どもの嗜好を栄養価よりも優先する状況が推察される。
「甘いものは少なく」をみると、1歳児27.9%、1歳6か月児27.3%、2歳児19.9%、3歳児16.1%、4歳児10.6%、5-6歳児9.2%と年齢が進むとともに減少した。一方、「甘いものに偏る」は、1歳児4.3%、1歳6か月児10.4%であったが、2、3、45-6歳児は、それぞれ17.2%、16.9%、17.6%、14.4%と低年齢児よりも増加していた。おやつの選択では、子どもの成長に伴い「甘いものは少なく」より「甘いものに偏る」傾向が強まっていたが、子どもの欲するままに好みのおやつを与えることは慎むよう、保護者に伝える必要がある。

第4回幼児健康度調査により、食事の心配事の有無と育児の自信、子育て困難感の有無の間に関連があること、また、朝食の摂取の有無と食事の心配事、偏食・少食・食べ過ぎなどの悩み、子育て困難感の有無の間にも関連があることが示された。さらに、起床・就寝時刻と朝食の摂取状況、就寝時刻と食事の心配事、偏食・少食・食べ過ぎなどの悩みの間にも関連があることが明らかにされた。
これらの結果から、食事の心配事の解決には、偏食、少食などの個々の問題に向き合うことと共に、生活リズムを整える必要があると考える。すなわち生活リズムが整うことで、食事の心配事が解消され、それが育児の自信につながり、子育て困難感も減少すると思われる。本調査結果を、保健指導、栄養指導に活用し、子育てが楽しく、自信をもって行える保護者が一人でも多くなることを期待している。

※『保育界』第470号(2013.10)からの転載