ブックガイド『虐待を受けた子どもの愛着とトラウマの治療的ケア』

更新日: 2014年6月20日

編著 スーザン・バートンほか著、開原久代ほか監訳
出版 福村出版、2013.12
定価 本体3,500円+税
ISBN 9784571420535

近年の児童虐待の増加により、児童養護施設に入所している子どもの主訴の半数以上は虐待である。虐待などのようなトラウマを負った子どもたちが数多く入所している施設の職員の待望の一冊である。

これまでは、虐待そのものやその影響を論じる書籍、またそのような子どもに対応する援助方法についての書籍は数多く出版されている。この本の斬新なところは、施設のような集団生活への対応、施設におけるケアをどのように実践するかなど、その現場にいる職員の視点による具体的な方策が数多く述べられていることである。

本書は子どもたちと実際に生活を共にし、苦楽を共にしてきた実践者が、実際の生活場面で子どもが示した行動や、その意味や、それに対する対応などを具体的に書いている。その内容は詳細かつ具体的であり、初心者だけでなく、中堅や管理者までも参考になる記述である。これらのスキルは、わが国の虐待を受けた子どもたちの対応にも活用できると考えられる。そのため虐待を受けた子どもと関わる可能性のあらゆる職種の人に読んで頂きたい本である。

また、この本に書かれた事例や施設ケアの理論的根拠は、これから児童養護施設や情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設などの児童福祉施設(以下、施設)に就職を考えている学生にもお勧めしたい。近年、現場において臨床や専門的援助をしていない団体が、売名行為や利益誘導のために、子どもが施設に入ること自体そのものや、施設でのケアが虐待であるという、これら施設への批判が数多く行われている。それら非科学的な行為により、傷つき悩む施設職員や、この分野に進んでよいか不安になる学生がいると思われる。しかしながらわが国の査読を受けた研究論文からは、およそわが国の児童の被虐待の割合は約5%存在しており、他国の保護基準と比較すると、わが国は施設入所率がそれほど高くない状態である。また、乏しい福祉資源のために、本来ならば治療や矯正が必要な子どもまでも施設でケアを受けなければならず、多くの課題を持つ子どもへのケアへの対応に職員は苦慮し、さらに、その職員へのケアが絶望的に少ない状態である。

施設においては、施設内虐待など数多くの課題がある一方、現場の人による実践研究により、家庭復帰した子どもよりも高校進学率が高く中退率が低いなど、将来の社会的困窮を防ぐ機能が再発見されつつある。この書籍のように、現場の人が参考になる本がわが国からもたくさん出版され、援助者のスキルが向上することにより、子どもの福祉が大きく発展することを期待したい。