ブックガイド『施設における子どもの非行臨床-児童自立支援事業概論-』

更新日: 2014年4月2日

編著 野田正人、相澤仁ほか編
出版 明石書店、2014
定価 本体2,400円+税
ISBN 9784750339481

本書は、社会的養護実践者および実践者を目指す人の養成・研修テキストとして作成された「やさしくわかる社会的養護シリーズ」の第7巻にあたる。このシリーズは第1巻の総論編から第2巻~第7巻の各論編に分かれている。最終巻にあたる第7巻は、全国児童自立支援協議会が平成19~21年の3年間にわたって実施してきた「児童福祉施設における非行等児童への支援に関する調査報告書」に基づいて作成された「児童自立支援施設における支援の基本」(試作版)を土台にしながら、初学者にもわかりやすく、より具体的な内容として構成されている。

この第7巻は15章で構成されており、第1~3章までが概論編、第4~14章までが実践編、第15章で現状と課題がまとめられている。各章の概要は以下の通りである。

第1章:児童自立支援事業とは
第2章:児童自立支援事業(児童自立支援施設)のあゆみ(理念的変遷)
第3章:児童自立支援施設運営指針と子どもの権利擁護

上述の3つの章では、児童自立支援施設の歴史や理念が整理されている。特に社会的養護の中で児童自立支援施設が歴史的にどのように位置づけられてきたのか、その役割や理念の変遷について理解することができる。さらに、平成23年7月に社会的養護専門委員会でとりまとめられた「社会的養護の課題と将来像」や平成24年3月にまとめられた児童自立支援施設運営指針に基づく最新の知見が示されている。重要なキーワードとして、「共生教育」「動的調和的共生」が取り上げられ、現代的な視点が盛り込まれている。

第4章:基本的な自立支援のあり方-人は人との暮らしの中でともに人になる
第5章:家族支援(家庭環境調整)
第6章:児童自立支援施設と関係機関連携・協働による地域サポートシステムのあり方-一貫したインテークワークからアフターケアの視点で
第7章:夫婦制における自立支援のあり方
第8章:交替制における自立支援のあり方
第9章:子どもへの適切なかかわりについて-アンケート調査をもとに
第10章:自ら行った行為(非行行為)と向き合うための支援
第11章:行動上の問題への対応と特別支援日課
第12章:強制的措置と自立支援
第13章:学校教育との連携・協働
第14章:年長の子どもの自立支援

上述の各章では、児童自立支援施設で支援を行うための実践的な視点について述べられている。児童自立支援施設における一連の支援について、子どもの入所前の支援(アドミッションケア)、入所中の支援(インケア)、退園前の支援(リービングケア)、退園後の支援(アフターケア)と整理することができる。これを具体的に示しているのが6章である。とくに行動化問題があり入所してくる子どもたちであることを考えると、「動機づけ」の重要さが指摘できるが、それらのポイントが丁寧に整理されている。次にインケアについては、子どもへの支援(4章)と家族への支援(5章)の2つの章で述べられている。4章では、行動化問題を抱える子どもの支援の原則、すなわち枠組みのある生活の中でいかに子ども自身の内的な枠組みを助長していくか―そのための文化や風土の形成と「生活の中の教育と治療(生活教育と治療的養育)」という具体的方法(実際には生活支援、学習支援、作業支援、進路支援)がまとめられている。5章では、入所中の行事への養育者の参加や一次帰省を活用しながら、アドミッションケアやアフターケアにつなげるための考え方と実践上のヒントが示されている。7~14章までは、子どもの課題、対象年齢、公教育、夫婦制や交代制における支援システムなど重要なポイントについてまとめられている。

第15章:児童自立支援施設の現状と課題-新たな将来像を模索する

終章では、公設公営を中心としてきた児童自立支援施設の民設民営による設立運営体制に関する議論や夫婦小舎制と交代制養育システムに関する検討、およびそれに関連する小舎制養育論等について指摘している。 最後に将来にわたって、社会的養護に関連する施設と児童自立支援施設が、『「つまづき」も「成長や発達の力」に変える』役割とその関係でありつづけることが希望され、結ばれている。

児童自立支援施設は、感化院(1900~1993年)にはじまり、少年教護院(1933~1947年)、教護院(1947~1997年)と名称を変え現在に至っており、その歴史や理念および実践は「教護院運営ハンドブック」や「児童自立支援ハンドブック」などに示されてきた。しかし時代の変化とともに、社会文化的な影響を象徴する子どものニーズにも新たな多くの困難が生じてきた。同時に長年夫婦小舎制で営まれてきた支援や準ずる教育から公教育の導入に伴う連携支援システムの導入などの変化も生まれてきた。こうした100年以上の歴史と実践を踏襲するだけでは対応できない現実に対して、本書は良き伝統を継承した基本的な自立支援のあり方を示しつつも、発達課題や精神障害に応じたケア・支援・治療・連携機能を含めた最新の取組みがまとめられている。「自己変革力こそ子どもを育てる力」という代表者の理念が込められた一冊である。

本書は現職の児童自立支援施設関係者のみではなく、多くの社会的養護に関わる専門職や学校関係者の方々にとって、自らの実践を振り返りブラッシュアップしていくための1冊となるだろう。また初学者にとっては、行動化問題への支援の原則を学ぶことができる良書である。こうした意味で本書は、ベテランにとっても初学者にとっても大いに参考になる一冊である。