ブックガイド『生活の中の養育・支援の実際』

更新日: 2014年2月20日

編著 奥山眞紀子、相澤仁ほか編
出版 明石書店、2013
定価 本体2,400円+税
ISBN 9784750339221

本書は、社会的養護実践者及び実践者を目指す人の養成・研修テキストとして作成された『やさしくわかる社会的養護』シリーズの4巻にあたる。このシリーズの編集方針は、「実践に役立つ臨床的視点を取り入れた、より具体的な実践論を中心に作成すること」「日頃から子どもが要求している内容や、里親や施設職員が知りたい内容(対応方法等)について盛り込むこと」である。しかし編集者の言葉にあるように、「『生活』とは多重的で、多義的で、多方向であり、いわゆる『正解』がなく、多くの機能を一度に営んでいるために、言葉にするのが難しい。」
本書は、上述の課題を解決し「生活の中の養育・支援の実践と実践理論」が盛り込まれた具体的・実践的な内容となっている。執筆陣は、この領域を牽引し続けている代表的な研究者および実践者である。

1章から10章で構成されている本巻は、大きく「生活の基本(1章)」「養育・支援の技術(2章~8章)」「各論(9章10章)」の3つの領域に分けることができる。
まず1章の「生活の基本」では、長年子どもとともに寄り添い、歩み続けてきた者でしかまとめることができない具体的・実践的な生活支援のポイントがまとめられている。キーワードとしては、「居場所」「関係性」「衣食住」「生活アセスメント」「自己決定」などが挙げられる。この実践的な基盤を基に、次の2章から8章の「養育・支援の技術」が位置づけられている。

次に2章では、乳幼児の養育についてアタッチメント理論の視点から具体的に解説されている。「実践上のヒント」には、すぐにでも活用できるポイントが示されており、初学者にとっても大変心強い。3章では教育学を背景に、教科教育と生活という生きる教育について経験的学習、教育的環境づくり、問題解決学習などをキーワードに説明されている。4章と5章では生活場面における治療的養育の考え方と具体的な視点と技術がまとめられている。つづく6章でも生活場面における面接技術として「生活場面面接」が取り上げられ、さらに7章ではその重要な技法の1つにも位置づけられる心理教育について述べられている。これらの章では、虐待やネグレクト環境で育ってきた子どもの心の傷を癒し回復するための生活とそれを促す具体的な考え方と方法が解説されており、大変参考になる。8章ではソーシャルワークを駆使する支援方法の1つとしてグループワークが取り上げられている。施設という複数の子どもが生活する場の中で、個々の困難をグループの相互作用を活用しながら支援するための考え方と方法が導き出されている。

最後に9章と10章では、生活支援の過程と子どものニーズに応じた具体的な留意点が解説されている。まず9章では、アドミッションケアからアフターケアまでの各支援段階で注意しなければならない視点が示されている。キーワードとしては「適応の段階」「テーラーメイドの生活内ケア」「生い立ちの整理」などが挙げられる。10章では、子どもの問題行動(外在化問題・内在化問題・トラウマなど)の理解と対応について解説されている。2~8章で示された技術をどのような対象に、どのような場面で、どのように活用できるのか―と、考えて読み進めるとより理解が深まっていくだろう。

以上のような構成に加え、もう1つ重要な点がある。それは、最新のトピックがまとめられたコラムが充実している点である。今日の社会的養護で注目されているライフストーリーワークや性教育のほか、アフターケアや真実告知などの目前の課題まで取り上げられており、一読した方はさらに深く学びたくなると思われる。

本書は、生活支援における基本となる考え方、具体的な支援技術、支援の段階や対象に応じたポイントが整理された実践的な良書である。社会的養護を利用することになった子どもには、「戻れる場所」「人生のよりどころ」が必要になるように、それを支える実践者にも「よりどころ」が必要である。多くの実践者にとって、本書はその1つとなるだろう。