ブックガイド『児童相談所・関係機関や地域との連携・協働』

更新日: 2014年2月13日

編著 川崎二三彦、相澤仁編
出版 明石書店、2013
定価 本体2,400円+税
ISBN 9784750339047

本書は、『やさしくわかる社会的養護シリーズ』の第6巻であり、今までの各論を縦糸とすれば、本作は各論を結ぶ横糸のような役割である。今までのシリーズ同様、想定されている読者は、社会的養護や子どもの安全にかかわる大人や、それを目指す学生であり、概観をわかりやすく伝えることに大きな役割がある。

本書は2部構成になっており、第1部は児童相談所との連携・協働、第2部は関係機関・地域社会・他施設との連携・協働というテーマになっている。
第1部は、児童相談所とは/児童相談所と里親・ファミリーホームとの連携/児童相談所と施設との連携/一時保護所との連携/委託一時保護による連携/児童相談所における法的対応が内容として盛り込まれている。
児童相談所の基本的業務はもちろん、支援としての子どものケアや里親・ファミリーホーム・養護施設との連携であったり、介入時点で必要な一時保護・委託一時保護、場合によっては一時保護や施設措置をめぐり攻撃的だったり拒否的な保護者の方への対応や、対立的になったときの法的対応なども掲載されている。
また、とても重要な事に、児童相談所の実状として、連携の際に支援機関同士でぶつかりやすい要因について、実践上のヒントが多くちりばめられている。現場でぶつかりやすい要因の一つとして本書の一例を紹介すると、児童相談所と施設の間で、児童相談所がそれまで行ってきた調査の重点と、施設側が必要とする情報との間でギャップが起こりうるため、そのような場合には“施設側が情報が不足していると感じられても「児童相談所は怠慢だ」と短絡的に批判するのではなく、「施設等で生活させる上ではかくかくしかじかの情報がほしいので、補足的に調査をしてもらえないか」などきちんと冷静に求めることが肝要であろう”とまとめられている。
連携と一言で言っても、支援機関同士でも、忙しく余裕の無い時に自分に必要な情報が抜け落ちていると、特定の機関や担当者を名指しで批判したり、場合によっては非難することも少なくないであろう。しかしながら連携とは、一事例だけでなく、持続可能で、具体的な仕事の役割分担が求められる。本書は、現場で起こりうるような連携の困難事例についても初学者や現場に携わる人にとって俯瞰的なアイデアやイメージが得られるように工夫されている。

続く第2部は、教育・医療・保健・司法機関などとの連携/市町村と施設との連携/要保護児童対策地域協議会との連携/児童家庭支援センターとの連携/自立援助ホームとの連携/他の子ども家庭相談機関との連携/当時者団体等の支援活動と連携/地域社会との連携が触れられている
第2部は、関連する機関名からも緊急で動く介入段階と、地域で長く関わる支援・治療段階で関わる機関との連携が焦点となっている。特に本書で着目する点は、介入段階において司法や医療との連携について今までの多機関連携の書籍や論文よりもある程度多くのページ数が割かれていること、そして当時者支援団体やNPOについても一章ずつ割り当てられているところであろう。
第2部は非常に幅の広い論考がまとまっているため、コラムにも興味深い現場のエッセンスがつまっており、読み応えがある。これまでの書籍や論考ではあまり触れられてこなかった物として、いくつか本書に特徴的な箇所を紹介する。1つ目は、大学や研究機関との連携であり、現場と研究を結ぶだけでなく、現場の外部評価としての機能や事例検討会の開催、今後の現場で活躍できる人材育成の視点が交えられている。
2つ目はコラムとして書かれている、実習生の心構えと受入という項目である。例えば、実習先で受け入れられにくい実習生とはどのような特徴であるか、5年10年前であれば、あくまで口頭で共有されていたような内容が、今の時代に合わせて言語化され、ある程度マニュアライズされた記述がある。このような記述は、よく「ここまで書かねばならいのか」という驚きをもって迎えられることもあるが、私自身は、言語化して残すことにこそ、メリット・デメリット両方を含む新たな価値を提示できると感じた。 人材不足であろうと、この領域に向く人もあれば、向かない人もいるし、教育からも現場からも、またこの領域を目指す実習生にとっても向き不向きを早期に判断できる可能性を提供できるであろう。あるいは、“○○の領域には◆◆のような人材が必要だ”という明確な指針は、等質の人材が集まっているからこそ出来ているところもあるであろう。一方で、現状を変えていくために、今後は今までとは違った人材や機関と連携・協働するための視点も投じられると思われる。
3つ目は、要保護児童対策地域協議会についても、イギリスにおける虐待死亡事例(Child Death Review)の歴史をふまえて多機関連携の視点が概要書で示されているという点は、欧米の教育カリキュラムと同様、子どもの死亡事例を防ぐために、多機関・多職種連携を進める上で、根本的な視点を学ぶことができる。最後は、NPO・NGOなどの民間団体である。ここでは活動内容を提示するだけでなく、民間団体もつメリットと役割の限界という点を本書でわかりやすく提示されたことにより、互いに違っている部分は行政と民間で役割を補いあえる可能性を具体的に学ぶことができる。

本書を総括すると、本書自体の内容は平成25年8月改正の子ども虐待対応の手引きの情報など2013年時点での最新の事例が盛り込まれている。また、メディアへの対応や事件対応についても記述されており、現場でなかなか体系化されてポイントにも内容が触れられている。
本書を一読すれば、各機関の役割とその違いがある程度イメージでき、連携という全体像を把握することができる。そのため、社会的養護の連携に関する入門書として、とても価値の高い良書と言える。

最後に個人的な感想として、社会的養護を基礎から学ぶ本シリーズにおいて、本書はもっとも幅広く現場の実状を示した内容であるため、本書を一番はじめに読んで社会的養護の全体像をつかんでから、本シリーズの他の各論を読むと、初学者にとって体系的に学びやすいのではないかと感じた。

※『保育界』第474号(2014.2)からの転載