ブックガイド『住民主体の地域子育て支援』

更新日: 2014年2月4日

編著 中谷奈津子編、山縣文治監修
出版 明石書店、2013.02
定価 本体2,400円+税
ISBN 9784750337616

この書籍は、近年活動が広まっている「子育てネットワーク」について、これまでのわが国の社会や研究の状況を踏まえ、これら実践にかかわる人や研究に関心を持つための指針となるべき本である。

この本の斬新な点の一つには、研究を現場にフィードバックする姿勢があらわれていることである。筆者らの研究グループは、数多くの量的・質的研究の結果から、これまでの「子育て支援」の主張で多くみられた、子育てという人生のライフステージにいる当事者を困難にいる人と仮定し、他者がどのようにして助けるのか、支援していくのかという視点から、さらに一歩学術的に前進した。それは、支援を受ける方を一方的な弱者と仮定せず、そもそもそれまで就労など社会で活躍してきた人たちが、子育てという領域に入った途端、社会的に孤立してしまうなど、支援を受ける側になってしまうという状態を明らかにし、その原因として子育て支援のサポート状況の不備などを冷静に論じている。そのような中、社会に広まっていく子育てネットワークについて、乳幼児や特別なニーズといった、個人単位では抱えることが難しい状況に直面した時に、人々がつながりあう(ネットワーク化)ことを求めていることを立証している。さらにネットワークの現状把握も行っており、行政や専門家主導ではなく、地域草の根的なネットワークが多いことや、ニーズの多さと資源不足や少ないメンバーで活動を切り盛りするなどの活動のジレンマなどの現状を明らかにしている。このようなことから、専門職と保護者、というフォーマルな関係性の構築だけでは子育て支援は完結せず、その人や家族を取り巻くインフォーマルな関係性の構築の援助も必要性を示すことの重要性を論じている。この主張からは、地域の子育て力を向上をさせるためには、例えば保育という専門職の視点からも、保育者である自分と保護者との関係だけでなく、保護者と保護者の関係や広く地域の人との関係を見る重要性や、保育所についても、保護者からすると一つの社会資源として相対化されていく必要性を論じている。まさに現在の国の子育て政策の根拠資料になっているとさえ思われるほど充実した論述である。

最後に本書の意義について論じたい。国は、国民生活に深くかかわる福祉等の課題に対し、科学的根拠に基づいた行政政策を目指して研究活動を推進しているが、まさに本書はそれを具現化しており、これからこの分野で研究をする者に必須の一冊である。さらに現場で実践している方にも活用しやすいようになっている。それは筆者らの研究姿勢を表すものである。今後このような研究を筆者らが発展させていくことを望みたい。

http://www.akashi.co.jp/book/b108488.html