ブックガイド『社会的養護における里親問題への実証的研究 養育里親全国アンケート調査をもとに』

更新日: 2013年10月12日

編著 深谷昌志・深谷和子・青葉紘宇
出版 福村出版/2013.08
定価 本体3,800円+税
ISBN 9784571420528

本書は厚生労働省科学研究研究費補助金の交付を受けて行われた「社会的養護における児童の特性別標準ケアパッケージ:被虐待児を養育する里親家庭の民間の治療支援機関の研究」の研究成果を用いて書かれたものである。
序章から5章までの全6章構成になっている。序章は日本の里親や里子の歴史研究を中心とし、自叙伝の中の逸話を取り上げており、1章からはアンケート結果からの引用による内容となっている。章と章の間には「社会的養護改革と家庭養護への期待」や「虐待を受けた子どもの理解」などの社会的養護に深くかかわる研究者や編者らからなる論考が掲載されている。

1章「里親のつぶやき」では、里親へのアンケート調査の自由記述欄から、里親の声を「子どもの状況、子どもへの対応」「親権の問題、面会や真実告知、制度、その他」「里親手当など」「児童相談所の専門性を高める」など8つの項目に分けて紹介している。ここで取り上げている自由記述による里親の声は非常に幅広いもので、8つの項目の中でもさらにいくつかの分類に分けている点で読みやすく書かれている。

2章「虐待を受けた里子の住む心的世界」では全国調査の調査票の自由記述欄から、里親が里子に対して感じている虐待に関する内容を記述している。2章においても大きく7項目に自由記述欄のコメントを分けている。また、自由記述欄の文章それぞれにはこのアンケートに答えた里親が自由記述をした一人の里子(A)の里親家庭に委託されるまでの環境6項目を番号で記載している。その点も子どもの行動を理解する上で役立つものだと感じる。

3章「里親たちの里子『療育』の日々」では全国の養育里親へのアンケート調査の結果を挙げている。このアンケート調査は54.1%の回収率で、1,209部の回答が得られた。このアンケートで里親が一人の里子(A)について回答している。里親の属性から、里子(A)の属性や学校生活への適応、気持ちの通じ合いなどの項目を記載している。また、このアンケート調査と共に行われた里親への面接調査の結果が、事例としても取り上げられている。この調査では里子1名(A)のみの結果が取り上げられているため里親に委託された子どもの全体像ではないが、編者が本書で取り上げているように里親養育ではなく「療育」と名付けるにふさわしいといった里親家庭における養育の具体的な姿が、数値や事例から読み取れる。

4章「里母の語った5つの人生物語」では53名の面接調査から5事例を選んで収録している。この5事例はそれぞれ里親を始めた年齢も実子の有無、社会的養護における子どもを養育した経験の有無、里子の委託時の年齢などには幅があり事例としてさまざまな角度から里親を捉えている。もちろん本書の事例以上に実際の里親の養育は多様であり、本書には書ききれない内容も多くあると思うが、里親の養育を理解しやすい内容となっている。

5章「まとめと、いくつかの提言」では、本書で述べられてきた里親養育についての4点のまとめと、提言として7点挙げられている。提言としては、里親と児童養護施設等の役割の明確化、児童相談所の里親担当の専門職と行政職の配置、乳幼児期の養育の里親委託の原則などである。提言の中にはこれまで里親制度の課題として掲げられてきたものも含まれており、全国のアンケート調査や面接調査を行った上で考えてみるとさらに重要な課題であることを再認識させられた。

最後に、本書も非常に内容が多様であり里親養育への理解を深めていくことができるが、本書のアンケート調査の詳細な内容や里親制度の現状・課題の考察を含んでいる、本書のもととなった報告書「社会的養護における児童の特性別標準ケアパッケージ」の平成24、25年度報告書を併せて読み深めていくこともお勧めしたい。