ブックガイド『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』

更新日: 2013年7月25日

編著 仁藤夢乃著
出版 英治出版/2013.03
定価 本体1,500円+税
ISBN10 4-86276-155-0
ISBN13 978-4-86276-155-2

この本の著者は、私が勤務する大学をこの3月に卒業した。と同時に「大人になったら、本書こう!そんで、うちらみたいに悩んだり、こんな必死に生きてる高校生がいるってことをみんなに伝えて、わかってくれる大人を増やそう!それで、今のうちらみたいに悩んでいる子をどうにかできるようになろう!」(本書、あとがきより)という言葉どおり、「渋谷ギャル」として生きた数年間のありのままの生活と、渋谷で出会った同年代の若者たちの姿と心の叫び、そして筆者自身の人生の転機を本書に書き綴った。

“難民高校生”とは、本来自分の存在意義を見い出すはずの家庭、学校に居場所を失なった高校生たち。そして彼らが最後の居場所とするのが、筆者が「難民キャンプ」と表した渋谷の街である。彼女も数年前にその“難民高校生”の一人として、渋谷を彷徨っていた。
筆者が渋谷で出会った同年代の少女たちは、彼女と同じく様々な理由で居場所をなくし、DV、摂食障害、妊娠、中絶、リストカットと生きることに希望を失いつつも、皆一様に何かにすがるように、安心して落ち着ける居場所を求めていた。一見自由奔放に、自信に満ちてさえ見える彼女たちが交わす会話、発する言葉には、寂しさとはかなさとがにじむ。

居場所を求めて必死にもがき、生きる彼女彼らたちに、大人は冷たく見下した視線を向けるだけで、手を差し伸べることすらしない。しかし、筆者は“難民高校生”としての生活に終止符を打つきっかけを作ることができるのは、彼らの可能性を信じ、一人の人間として対峙してくれる存在、そして場であると自らの経験から示唆する。

今、高校生たちが人生に迷い、悩み、少し寄り道をしたり立ち止まった時、ゆっくりと見守り、寄り添う寛容さが学校や社会において希薄になったことを嘆くよりも、筆者が、若者が夢や希望をもてる社会をつくるヒントとして挙げた「大人にしてほしい3つのこと」【「個人として向き合う」、「可能性を信じる」(大人自身の)、「姿勢をみせる」(大人が挑戦する、チャレンジする姿)】を、私たち大人が自分自身に問いかけたい。そして、“難民高校生”を生む社会は、大人が作った社会であることを再認識する必要があるのではないだろうか。

筆者は現在、かつての自分のような高校生たちが集い、一人の人間として向き合ってくれる<だれか>とめぐり会える場づくりに取り組んでいる。筆者の真っ直ぐな生き様と情熱がまぶしく感じられた。

難民高校生