ブックガイド『子どもの発達・アセスメントと養育・支援プラン』

更新日: 2013年6月28日

編著 相澤 仁 編集代表
犬塚 峰子 編集
出版 明石書店/2013.05
定価 本体2,400円+税
ISBN 9784750338187

本書は、「やさしくわかる社会的養護」シリーズの第3巻にあたる。
想定される読者は、社会的養護にはじめて携わる支援者、および社会的養護に今後携わりたいと考える初学者(学生や実習生など)である。特に本書は、児童相談所や児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設における子どもの発達とアセスメント、そして養育・支援プランの策定が中心に描かれており、これらの社会的養護の支援機関での実践をしたい方達にはとても大事な入門書として位置づけられる。

本書は3部構成になっており、理論体系だけでなく、現場における対応のポイントに力点が置かれている。そのため、現場で苦慮しやすい対応が、コラム形式で綴られていたり、現場で実際に使われているアセスメントシート作成の具体的なコツや、子どもの支援に対する具体的でわかりやすい支援プランニングの描き方などが、ふんだんに盛り込まれている。より詳細な構成を以下から概観する。

第1部は、子どもの発達についてまとめられている。
心理学や社会福祉学などの授業を受けたことがある方ならば、どこかで聞いたことがあるような基礎的な心理社会的な発達をわかりやすくまとめてある。さらに、脳科学など生理学的な指標も体系的かつ現場で必要なポイントに絞ってまとめられている。例えば、トラウマに対する脳科学的な機序や、実際に現場での治療や支援に対する最新の国内外のエビデンスが要所要所に記されており、子どもの発達に関する基礎理論と現在解明されつつある、子ども虐待や子どものトラウマに関する生物・心理・社会の多面的な説明が加えられている。

続く第2部は、アセスメントと自立支援計画について、どの支援機関でも共通するアセスメントで注目すべき視点、ケースカンファレンスの資料作成のポイントやケース記録の描き方など、具体的な対応方法がまとめられている。現場で使われている記録票の例が多く盛り込まれ、初学者でも明確なイメージが得やすいように画かれており、その工夫が読者を飽きさせない。

最後に第3部では、第2部のポイントをさらに乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設といった具体的な機関別に整理をしなおし、各機関におけるアセスメントと自立支援計画策定の実際と、大切にすべき点を丁寧に画いている。特に、急に異動になった支援者や学生が実習に行く場合など、第3部の施設毎のポイントをあらかじめ知っておくと、実習先の各機関の役割と限界について、ある程度把握することもできるだろう。

本書は入門版のテキストとして、読者のニーズに合うよう、アカデミックな抽象論はなるべく避け、現場の臨床実践や工夫、ポイントなどわかりやすく伝えており、現場ですぐに役立てる知見の提供に重きをおいている。これは執筆者一覧からも、その多くが現場の最前線で活躍している人達からも読み取れるだろう。 そのため本書は、初学者に対して、社会的養護の全体像だけでなく、生物・心理・社会に基づく現場の統合的な視点や、各章毎に書かれているコラムで時に現場で支援者が陥りがちなポイントをわかりやすくまとめ、具体的な対応策を提示するなど、とにかく現場に根ざした視点に満ちあふれている。 また、先にも記したが、各機関で使われている支援計画の具体的な記載例や、アセスメント資料のまとめ方などが非常にわかりやすく記されていることも、具体的なイメージを読者に抱かせる本書のとても優れた点である。

最後に、本書の中には、時に現場でヒートアップした際に忘れられがちなルール、例えば本書では「人格を否定するような発言や攻撃的な発言はしない」といった当たり前のルールがいくつか、あえて表記されている。現場の執筆者達が、このような当たり前のポイントを明記する理由は、初学者を含む支援者に対して、常に肝に銘じておきたいルールとして本書で改めて警鐘を鳴らしたいからであろう。

本書は、子どもの発達・アセスメントと養育・支援プランという内容を、現場からまとめ上げられた良書であり、大学や専門学校の座学だけでは味わいにくい、Scientist Practitioner(科学者兼実践家)達のエッセンスがふんだんに盛り込まれた最良の入門書の一冊と考えられる。

子どもの発達・アセスメントと養育・支援プラン