ブックガイド『施設・里親から巣立った子どもたちの自立』

更新日: 2013年6月11日

編著 武藤素明編著
出版 福村出版、2012
定価 本体価格 2000円
ISBN 978-4-571-42046-7

「児童養護施設の働きが成功したかどうかを判定する最も重要な目安は、退所後に子らがどうなるかということであろう」と述べたのはロジャー・グッドマンである。

では、日本において、児童養護施設や里親家庭など社会的養護を巣立った子どもたちはどうなっているのだろうか。これまで実践現場や他分野からの報告によって、児童養護施設を退所した後に困難な生活を送る人が少なくないことは知られていたが、実態の把握はほとんどなされておらず、具体的な状況が見えてこなかった。しかし、近年、いくつかの自治体や団体で退所後の実態調査が行われている。

本書は、第1部で東京都、大阪市、NPO「ふたばふらっとホーム」による3つの実態調査の結果を紹介し、第2部で3人の児童養護施設生活経験者から自立の課題が示されている。この二部構成で、児童養護施設や里親家庭から巣立った子どもたちの自立について迫ろうとする1冊である。

第1部で紹介されたすべての退所後調査の結果に共通しているのは、総じて退所後の経済的困難と孤立感の大きさであった。物質面の充足だけでなく、精神的なサポートが必要とされていることが改めて示されている。各章では、調査の結果をうけ、中卒退所の困難さ、NPO等によるサポートのあり方など、自立支援に向けた提言も行われており、示唆に富んでいる。

一方、この点は社会的養護全体の課題であるが、本書でも示されている通り、3つの調査は児童養護施設や里親家庭と連絡が取れる退所者・措置解除者への郵送法による調査となっている。転居や転職を繰り返したり、養育者との関係を絶とうとする人たちには、調査票が届いていないことが想定され、実際にはより困難な実態が存在する可能性がある。養育者に回答を求める調査法など、より実態に近い状況を明らかにできるような方法を検討し、全国共通での調査が必要であろう。

第2部の「当事者が語る自立の課題」で行われている、「自立」とはなにか、「自立」に必要なものはなにか、改めて問い直す3名の考察も読み応えがある。なかでも、「施設などが必要な子どもたちは自立するために生まれてきたのだろうか」という疑問は、自立がゴールとされがちな社会的養護の現状に一石を投じているように感じる。

子どもたちが本来もつ力を回復させ、措置解除後にもそれぞれの自己実現に向かって暮らせるために、社会的養護は何を保障すべきなのだろうか。今後、措置解除後の実態把握とその結果をもとにした制度の改善は、社会的養護領域全体の大きな課題であり続けるだろう。本書はその基本を理解するための良書といえる。

※Roger Goodman (2000)CHILDREN of the Japanese State: The Changing Role of Child Protection Institution in Contemporary Japan Oxford University Press.
『日本の児童養護―児童養護学への招待―』津崎哲雄訳、明石書店、2006